大橋悠依と「勝負水着」、メダルに向けた選手とメーカーの二人三脚

Photo by Mustafa Yalcin/Anadolu Agency via Getty Images


素材にもこだわっている。元の合成繊維生地を精密に温度制御して洗うことで適性な伸縮性を持たせ、繊維の一本一本を細かく加工して撥水性を持たせた素材を使っている。東レと新たに共同開発した撥水生地で、水中重量も従来品と比べ約20%軽量化した。

「太ももの裏にシームを入れたり、場所によって生地を一重にしたり、二重にしたり、細かな調整をすることで強弱を変えてパワーを引き上げるといった配慮もしています」

大橋選手からのリクエストだった「水着に“水が気になる入り方をしない”」には、背中やお尻など、水が入る可能性のある部分に細かいシャーリングをかけ、肌と水着が密着させ、水を入りにくくすることで対応した。


(c) Mizuno Corporation

大橋選手は、ホールド感の異なる3種類の中から、動きやすい「NEO」タイプを愛用。ホールド感がそれほど強くなく、着心地も良いタイプだ。距離や泳法に応じて選ぶものだそうで、特に距離の長い400メートル個人メドレーでは、ホールド感より動きやすさを重視するのだという。


Photo by Mustafa Yalcin/Anadolu Agency via Getty Images

ミズノは、白血病から復活し、五輪出場を果たした池江璃花子選手にも水着を提供している。

「池江さんとは中学生の時に契約させていただき、それからサポートし続けています。白血病を公表された時も、本人の意向を尊重して広告起用を続け、復帰に向けて応援することに決めました。彼女にはこれまでも驚かされることばかりでしたが、これほどの早い復帰には驚愕しました。私たちもその努力に負けない挑戦をしなければと思っています」

今大会、池江選手は以前とは違う水着を選択した。

「肩の太さなどが少し変わりましたので、サイズでいえば、LだったものがLとMの間になったくらいの感じでしょうか。そして、以前はホールド感がしっかりしたタイプでしたが、いまは泳ぎやすさを重視して、大橋選手と同じ「NEO」を着用しています。長く一緒にやってきましたので、どのタイプも信頼して使っていただいてるのだと思います」


写真:AFP/アフロ
次ページ > 舞台は世界水泳、そしてパリ五輪へ

文=小林信也(作家・スポーツライター) 編集=宇藤智子

タグ:

連載

Forbes Sports

ForbesBrandVoice

人気記事