チームを「チームワーキング」の状態にするには、メンバーがチームをどのようなものとして見るのかという「チームに対する見立て」も重要になります。
ついつい人間は、自分の視点ばかりに注目して、チームや職場がどうなっているのかという視点を失いがちです。そうすると、自分の仕事だけやっていればいい、チームのほかのことは知らない、となってしまう。チームの全体像を常にとらえる「チーム視点」、自らもリーダーとして当事者意識をもってチームの活動に貢献する「全員リーダー視点」、チームを「動き続けるもの、変わり続けるもの」としてとらえる「動的視点」、この3つをもつことが不可欠です。
不確実性・複雑性が高まる状況で、リーダー1人の判断だけに頼るのは極めて危険です。全員が貢献できるところを見つけて貢献しあう「全員リーダーシップ」の発想をもてば、メンバー全員がリーダーとなり、必要なリーダーシップを発揮することが成果の最大化につながります。そうしてチームを前に進めていくのが「シェアード・リーダーシップ」という考え方です。
人にはみな得意不得意があるので、自分が得意なときはリーダーをやればいいし、そうでないときはフォロワーに徹すればいい。そのために必要なのが「セルフアウェアネス」です。セルフアウェアネスは根本的には、人と協働していくための基礎となる自己認識です。自分の強みと弱み、自分が他人に与える影響力を把握することで、チームに貢献できる。これはリーダーはもちろん、メンバー一人ひとりにとっても欠かせない能力です。
いままでの日本企業は、同じ時間・場所に多様性のない「日本人男性」が集まるある意味「村社会」でした。いったん入村して長く過ごせば、特に教えられなくても村民になる。だからマネジメントのスキルが多少低くても機能しました。しかし、これからの職場はいろんな人が行き交うバザールのような場所になる。多様な人たちを束ねるスキルが必要ですし、一人ひとりのセルフアウェアネスがないといけない。チームを動かす「チームワーキング」はリーダーだけの責任ではないのです。
なかはら・じゅん◎立教大学経営学部教授。1975年、北海道生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院、米マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、現職。