Close RECOMMEND

Dispelling health myths, fads, exaggerations and misconceptions.


さらに研究者らは、社交の場で作り笑いをすること(少なくとも顔をしかめないこと)により、たとえそれが故意に作った表情だとしても、笑顔を続ける正の強化(好ましい刺激を与えることでその行動が強化されること)につながるだろうと主張している。実際に同調査では、ボトックスを使ってしかめっ面を減らすことによるうつ病症状の緩和効果が、経口抗うつ薬の2倍以上であることが分かっている。

これは朗報だろうか? 必ずしもそうではないようだ。

ニコラス・コールズ博士と同僚らは、ボトックス注射がうつ病に与え得る影響について調べた結果、この研究に関していくつか欠陥があることを報告している。2019年に発表されたコールズ博士のグループ研究では、今回の2021年の報告書で発表された新しい研究を除き全ての研究がレビューされた。

その中で調査チームは、バイアスの問題や患者の数が少な過ぎること、利益相反(独米の調査グループの一部は、ボトックスを製造するアレルガンから資金提供を受けていた)の問題に焦点を当てた。

ボトックスがうつ病の兆候を緩和するかどうかはまだ定かではないが、コールズと同僚らが2019年、1万1000人以上の患者を対象とした100件以上の研究をレビューしたところによると、顔の表情(特に笑顔に関連するもの)が、情緒反応に確かに影響を与えていたことが分かった。

この「表情フィードバック仮説」はチャールズ・ダーウィンが最初に提唱したもので、顔の表情が感情に影響を与え得るという概念だ。つまり私たちは幸せだからほほ笑むだけでなく、ほほ笑むことで幸せに、あるいは少なくともより幸せになれるのだ。

とはいえ、うつ病は単に不満、悲しい、あるいは浮かない気持ちになることよりはるかに複雑で、「心配しないで幸せになろう」という単純な考えで解決できるものではない。

しかし、増え続けるうつ病治療の選択肢に新たに一つ選択肢を加えることは悪いことだろうか?  これが奇跡の治療法である可能性は非常に低いもののおそらく悪い影響はなく、効果が得られることさえあるかもしれない。

翻訳・編集=出田静

メンタルヘルス

PICK UP

あなたにおすすめ