サッカークラブがトークンを発行する取り組みは、ヨーロッパではFCバルセロナやユベントスなどが話題となったが、日本ではサッカーJ1の湘南ベルマーレがフィナンシェと手を組み、国内で初めてプロサッカーのクラブトークンを発行。トークンの売買取引による増収やコミュニティーづくりの新たな手法として活用されている。
その中で、意外な反響を得ているのが、渋谷区に拠点を構え、東京都社会人サッカーリーグに所属する「SHIBUYA CITY FC」だ。クラブトークンの二次流通マーケットでの収益は1000万円を達成し、コミュニティメンバー数はFiNANCiE最大の約3000人に上る。
プロチームではなく、社会人サッカークラブが、なぜこれだけ大きな反響を得ることができているのか。その裏側について、SHIBUYA CITY FC取締役の小泉翔とフィナンシェCOOの前田英樹に聞いた。
ベンチャー精神の高いクラブ 前例がないことをポジティブに
──SHIBUYA CITY FCがどんなサッカークラブか教えてください。
小泉:クラブが発足したのは2014年。起業家やデザイナーなど、当時24、5歳の同世代の仲間が集まって「面白くて、かっこいいサッカークラブをつくろう」と考えたのが設立のきっかけです。2019年に東京都社会人サッカーリーグ・2部リーグに昇格したことを機に、運営会社を法人化し、本格的にJリーグ参入を目指して活動しています。
売上総利益(粗利)で今期1億円を目標に設定し、半数以上をスポンサー収益で賄い、残りは渋谷を中心とした事業開発を展開しています。社員はIT企業の出身者が多く、サッカークラブを用いたマーケティング支援などスポーツ軸の事業を手がけているのも特徴です。
SHIBUYA CITY FC取締役 小泉翔
──フィナンシェを導入するまでの経緯は?
小泉:フィナンシェの社員の方と知り合うタイミングがあり、田中隆一社長を紹介してもらったのが、2020年末。当時は別のクラウドファンディングを行っていた時期だったので、それが落ち着いてからFiNANCiEのプロジェクトの準備を始めました。
始める前から、トークンを利用した海外クラブの取り組みは調べていました。準備をしていた段階では、まだ国内のサッカークラブが行っている事例がなく、前例がないことは私たちにとってとてもポジティブなことでしたね。もともと既存のクラブが挑戦しづらいことにどんどん取り組んでいこうとするベンチャースピリットが根本にあるクラブなので、ブロックチェーンの技術を利用した次世代型クラウドファンディングはとても魅力的に感じていました。
1カ月で1000万円強の売上 トークン単価は向上するも
──プロジェクトを掲載し、トークンを発行した後はどれくらい反応がありましたか。
小泉:クラブとしては2021年5月の1カ月間で1000万円強の売上がありました。また、コミュニティメンバー数も当初は約500人だったんですが、1カ月で2300人増え、その後も徐々に増加し、今は3077人(6月29日現在)になっています。