「頭が痛むと思ったら、低気圧が近づいていた」というように、近年、低気圧が体の不調と深く結びついていることが認知されてきている。このような気象が原因で起こる体調不良は、「気象病」や「天気痛」などと呼ばれている。
気象と密接に関わっている症状は頭痛だけではない。冒頭で挙げた体のだるさや抑うつ症状、さらには眠気やぜんそくの発作、古傷の痛みなども、気象と密接にかかわっている場合がある。
なぜ、雨の日はやる気が出ないのか
私たちの体にはもともと、外の環境がどうであろうと、体内を一定に保とうとする力が備わっている。確かに、外の気温が30℃であろうと10℃であろうと、体温は約36℃を保っている。気圧についても同様だ。ポテトチップスの袋を気圧の低い山の上に持っていくとパンパンに膨らむが、私たちの体は山の上でもそこまで膨らまない。
体内の状態を一定に保つ力を管理しているのが自律神経だ。自律神経には体を緊張状態にする「交感神経」と、弛緩させる「副交感神経」の2種類があり、外の環境に合わせてどちらかの神経が優位になり、体の組織を緊張させたり弛緩させたりする。
ところが、環境変化が急激だと、自律神経の働きがそれに追いつかなくなってしまう。たとえば、低気圧が接近して気圧が急激に変化したとき、自律神経の働きがその変化に追いつけずに、血管が過度に拡張して片頭痛が起きたり、逆に過度に収縮して緊張性頭痛が起きたりする。これが「低気圧で頭が痛くなる」症状の正体だ。
愛知医科大学の痛みセンターに、日本初の気象病外来・天気痛外来を開設した佐藤純教授は、次のように解説する。
「女性はもともと片頭痛に悩む人が多いため、低気圧が近づくと片頭痛を訴えやすい傾向にあります。一方、男性は片頭痛持ちの人もいますが、緊張性頭痛や首・肩の凝りを訴える人のほうが多いです。また、痛みを感じにくい人は、頭痛を痛みと自覚せず、めまいや体のだるさ、抑うつ症状として自覚しやすい傾向にあります」
梅雨前線が停滞すると頻繁に低気圧が発生する。しかも梅雨前線は、温度や湿度が違う空気どうしの境目に存在するため、前線が南北に動くたびに大きな温度や湿度の変化にさらされる。そう考えると、梅雨どきに体調不良を訴える人が増えるのは仕方のないこととも言える。