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「経済成長一本槍で突っ走っていくことにずっと疑問がありました。せっかく若手が集まれるなら、その疑問を徹底的に議論してみたいと思うようになったんです」

それが、冒頭の報告書をまとめあげた「グリーン成長に関する若手ワーキンググループ」だ。民間企業、大学、研究機関、経産省と地方局から総勢76名が集まった。こちらも塩瀬氏が再び座長を引き受け77名となった。



77人の思いを引き出すために大切にしたこと


その時はすでにコロナ禍。77名もいるオンライン会議でどうしたら膝詰めの密な議論ができるのか、杉山さんは途方に暮れたという。

「77人全員をどーんとオンラインミーティングツールに入れてしまうと、議論にならないのは目に見えていました。人数が多すぎるし、みんな意見がまったく違うので議論が平行線をたどることも予想されました。黙ったまま意見を言えない人もいるであろうことから、どう進めたらいいのか悩みました」

そこで考えたのは全体を12~3人の6チームに分け、各チームでテーマを決めてディスカッションしてもらう方法だ。

会議のチャンスは5回。短期間で大所帯を動かすため、何よりも「場づくり」を大切にした。心理的安全性を担保し、思考の枠組みを外すことに心を砕いた。

「いろんな意見があっていいし、いろんな価値観や視点を共有した方がいい。どの意見も正解じゃないし、どの意見も不正解じゃない。『そもそも』を疑ったり、答えのない問いをゼロベースで考えたりする場をつくれたら、安心して意見が言えて新しい発想が生まれるんじゃないかと思いました」

さらに会議に新たな刺激を加えるべく、地方企業の経営者や地方自治体の職員、ESG投資家、高校生などをゲストに招いたり、「カーボンニュートラルな未来像」についてビジュアルを用いながらイメージを膨らませたりする機会を設けた。

「自分たち自身が納得していないのにカーボンニュートラルを推進する取り組みはできない。なぜやるのか、何を解決するためなのか、何度も話し合いを重ねました。その中で、『将来の選択肢を広げたい』という意見がありました。今はまだ若手と言われている自分たちが50~60歳になる頃、自分の子ども世代がいまの自分たちと同じ20~30歳になっている姿を想像して、出てきた意見だと思います」

杉山さんたちの世代には、サステナブルな社会や生き方について、そもそも人生や思考のなかにインストールされているのだろう。



思考の枠組みを外し、新たな社会を描く


そんな風に柔軟な思考を持っているようにみえる若手でも、既存の枠組みを超えた発想を生み出すためには、発想のプロセスから刷新する必要があるようだ。

ELPISで未来像をディスカッションしていたときには「2050年の社会に必要なステークホルダーを3つ見つけよう」というテーマを設定したこともあったという。

「普通は企業、自治体、教育機関などと考えがちです。でも私は『コメ』をステークホルダーにおいてみました。食糧生産、健康、里山……地球温暖化の進む社会で、『コメ』を通じてヒトの生き方、自然との向き合い方を語れるのではないかと考えたからです」

若手ワーキンググループの議論でも、議論の切り口に工夫を凝らしたという。

「若手でこうしたプロジェクトを進めるときは、マイルストーンを置かないほうがいい気がしているんです。仕事モードになって、タスクをこなさなきゃ、と考えが凝り固まってしまうことをなるべく避けようとしています。カーボンニュートラルの議論においてもロードマップを検討している部署は経産省内に別にあるので、あえて違う角度から切り込むことを意識していました」

取材・編集=谷本有香 文=石川香苗子

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