アフリカのVCが見るローカルスタートアップ

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「偽造医薬品」という言葉は、どれだけの日本人に馴染みがあるだろうか。薬局や医師から処方される薬が偽物かもしれないと疑ったことがある日本人はどれだけいるだろうか。

WHOによると、偽造医薬品は“世界で最も儲かる偽造品”とも呼ばれ、推定で年間20兆円規模の市場にまで拡大している。その被害の42%はアフリカからの報告であり、アフリカ全体で毎年約10万人が偽造医薬品によって命を落としている。

偽造医薬品とは、内容量や原料などに虚偽の表示がある、または品質基準や品質規格を満たしていないなど、規制当局の承認を受けていない医薬品を意味する。しかし、その見た目は、ファイザーやノバルティスなど世界的な医薬品メーカーが製造する正規品と見分けがつかないほど精巧に模倣されている。


左側が正規の薬で、右側の偽薬

アフリカでは、マラリア治療薬から抗生物質まで、多岐にわたって偽造医薬品が流通している。それらを誤って服用すると、身体に異変が起こり、最悪の場合、死亡してしまう。または、薬の成分が十分でないために効果が得られず、本来薬によって救えた命を失ってしまう。

あるいは、偽造医薬品によって体調が悪化し、必要以上の医療費を負担せざるを得なくなり、貧困が悪化するケースもある。こうした“異常”が“日常”のように起こり、深刻な社会課題となっている。

医師や病院が意図せず“加害者”に


アフリカ各国の医薬品製造割合は、約20〜30%。アフリカでは医薬品を主に海外からの調達に頼っており、多くはインドや中国、EU諸国から輸入している。その流通の管理や規制局の取締りの不手際、不正を試みる悪徳輸入業者の存在により、アフリカには世界のどこよりも多く偽造医薬品が流通している。

人口約2億人を要するナイジェリアでは、人口増加と共に医薬品市場が年率10%前後で成長し続けている。しかし、同国の医薬品管理を担う行政機関NAFDAC(ナイジェリア食品医薬品局)によると、国内に流通する医薬品のうち、17%が偽造医薬品だという。

偽造医薬品が原因で患者が死亡したことが報告されると、それを提供した医師の逮捕や病院の営業停止が政府より宣告される。日々、患者の命を救おうと奮闘している医療関係者が意図せず加害者になってしまうのだ。

文=寺久保拓摩

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