コロナ禍で日本経済が大きく落ち込んだはずの2020年度の税収が、昨年末時点における政府の予想を5兆円以上も超えて、これまで過去最高だった2018年度の60兆3563億円をも上回ったのだ。
税収が過去最高を更新したというニュースは、コロナ禍の生活実感とはかけ離れた内容に感じるかもしれない。今回は、このニュースを深掘りしていこう。
コロナ禍で税収が過去最高となったカラクリ
2020年1月ころから、新型コロナウイルス感染症の猛威が世界経済を襲った。日本も例外ではなく、経済に大きな打撃を受け、物価の変動を考慮した日本の2020年度の実質GDP成長率は前年度比マイナス4.6%となり、リーマン・ショック時の2008年度の下げ幅(同マイナス3.6%)を上回り、記録が残る1956年度以降で最悪となった。
このデータに関しては、生活実感とかけ離れてはいないだろう。街中を歩けば居酒屋を中心として営業を停止した飲食店をよく目にするし、ボーナスが減ったり、アルバイトをクビになってしまったりした人も多いはずだ。
このような歴史的不況下において、税収が過去最高を更新したというニュースに触れれば、学生たちが違和感を覚えるのも無理はない。
しかし、税収の内訳を見ていけば、そのカラクリは次のように考えられる。
まず、不況下においても税収が過去最高を記録した大きな要因は、2019年10月に8%から10%に引き上げられた消費税だ。消費者からすると増税の影響は10月1日から発現するが、事業者が消費税を預かってから国に納付するまでにはタイムラグがあり、税収の観点からすると消費税の効果は遅れて表れるものであり、まさに2020年度にそれが丸々反映されたのだ。
また、コロナ禍でも所得税や法人税は底堅かった(減るようで減らなかった)が、その理由はそれぞれ以下の通りだ。まず、雇用調整助成金のおかげで本来あるべき状態よりも労働市場の悪化が食い止められたこと。それと、株式市場が堅調だったことによって、株式譲渡益課税による税収が増えたことだ。
そしてもうひとつ、以前からあらゆる媒体で指摘しているのだが、コロナ禍の特徴である「バラバラ」が法人税にも表れたことだ。
つまり、飲食店や宿泊・観光業がコロナの逆風を思いきり浴びる一方で、巣ごもりや在宅勤務といったライフスタイルの変化が追い風になった企業もあり、コロナ禍の影響は業種によってバラバラなのだ。それら一部の好調な企業からの法人税収が全体を支えたということだ。