なぜコロナ禍で税収が「過去最高」になったのか? 生活実感とのズレを紐解く

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「過去最高の税収」のニュースを深掘りしていくうえで、あらためてコロナ禍の経済のややこしさを実感した。

前述の通り、コロナ禍が追い風となった企業もあれば、株高によって資産を増やした個人も多くいるため、コロナ禍の影響は人によって「バラバラ」である。

こうなってしまうと、人間の想像力は貧弱なため、影響がなかった人が影響を受けた人のことまでを想像して物事を考えることができず、その結果、国民の間で不要な分断が生じてしまう。

たとえば、特別定額給付金をもう一度やろうという提案に対して、コロナ禍の影響がない人は反対をする。そんなものをもらうほど困窮していないし、その結果として将来の増税につながるのは困るという考えなのだろう。

一方、そのお金で救える命があるのも事実である。それであれば生活困窮者だけに配ればいいという意見もあるが、実際には生活困窮者ほどいますぐお金が必要な状態にあるにもかかわらず、誰に配るべきなのかという精査をしていると時間がかかる。そのタイムロスが致命的なものとなるため、結果としてはスピード優先で一律で配るという話になり、結局は本件1つとっても堂々巡りの議論が生じる。

コロナ禍における経済のニュースを見る場合、しっかりとデータを確認しつつ、そのデータがどこまでの範囲をカバーした数字なのかも同時に確認し、あらゆる立場にいる人たちのことも想像しながら咀嚼して理解することを提案したい。

連載:0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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