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2021.07.09 10:00

成果が出るのは私がいなくなってから。日立CHROの覚悟と実践

日立製作所代表執行役 執行役専務CHRO兼人財統括本部長 中畑英信

日立製作所は2021年3月、約1兆円を投じて米IT企業グローバルロジックを買収すると発表。

09年から戦略的転換を行いながら、「社会イノベーション事業のグローバルリーダー」を目指す同社を象徴する出来事だ。こうした事業変革を人材部門から支えたのが、中畑英信執行役専務だ。「グローバル共通人財マネジメント基盤の構築」「ジョブ型マネジメント」などにいち早くから取り組むCHROは、何を目指してきたのか。


──事業構造の転換を図るなかで、人材マネジメントはどう変化したか。

08年度に7873億円の赤字になり、危機感から強く打ち出したのが、「社会イノベーション事業」と「グローバル」というキーワードだ。社会イノベーション事業では、お客様も気づいていない課題を、こちらからプロアクティブに提案しなければいけない。従来の、「いい技術者を数多く雇って育成する」というマクロでの発想の時代から、求められる人財の質が変わった。

CHROの位置づけも変わった。以前は、事業は事業、人事は人事で比較的独立していたが、いまは人事が事業を理解して、例えば「事業を強化するには、採用か、育成か、それともM&Aか」というところから考える必要がある。CxOは、CEOで主にx関係をやる人だと考えているが、CHROもそうだ。CEOで人事を主にやる経営者として、経営戦略、事業戦略も考えながら、同時に人財戦略を考えて、かつ、実行しなければならない。

──変革期に自身はどうやって意識改革をしたか。

00〜04年にシンガポールでマネジメントをやったことが大きい。日立製作所(日本)の退職率は約1.5%で、社員が辞めないことを前提にマネジメントするが、当時赴任した日立アジア(シンガポール)は約25%。辞めることを前提にしてやり方を変えないとうまくいかない。その経験があったので、日本での転換点においても意識変革の苦労はなかった。

──具体的に何を変えたか。

真っ先に取り組んだのは、人事制度をグローバルで共通化すること。それまではどこにどのような人財がいるのか、横並びで見ることができなかった。まず12年のグローバル人財データベース導入からはじめ、14年にはGPM(グローバル・パフォーマンス・マネジメント)システムを入れたが、このときは「各国で労働市場が違うから共通化は不要」「すでにMBO(目標管理制度)がある」と抵抗が強かった。システムの説明から入ったことが反省点だ。

やはり経営戦略や事業から説明して、社員が腹落ちしないと浸透しない。15年以降、順次、新人財マネジメントプラットフォーム「Workday」を導入しているが、「経営や事業がこうなっているから必要だ」と説明している。
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文=村上 敬 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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