「地球を終わらせない」代替肉開発 フードテックで救う食の未来|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、ネクストミーツ取締役会長の白井良


白井:我々にとって、ESGはど真ん中にあります。いまは利益だけを追求する会社よりも、せっかくなら世の中をよくする会社に投資したい、と考える投資家が増えています。そういった社会貢献を目的とする会社に資金が入り、世の中が良くなっていくという流れになっているんです。いまは「優しい資本主義」だと言われ、いい時代になってきたと思います。

NYNJ大林:近所のスーパーでは、最近大豆ミートの食材が増えてきました。世界、そして日本の代替肉市場規模はどのくらいでしょうか。また代替肉や培養肉の研究は今後ますます広がるのでしょうか。

代替肉
ネクストミーツの研究室「NEXT Lab」

白井:現在の世界の市場規模は2500億円くらいで、日本はそれの10分の1弱の規模だといわれています。日本の市場も右肩上がりになると思いますが、明らかにマーケットが小さいですね。アメリカは市場が大きく、伸び率も大きいので我々も注力しています。

また、イスラエルやEUの国々もスピーディーに研究が進んでいます。イスラエルでは1日当たり500キロくらい作れる培養肉プラントを作ったそうです。今後、代替肉領域のプレイヤーは増え、技術も加速し、半導体開発と同じようなスピードで伸びると思います。まさに我々も世界から科学者を集めて、新しい食品原料の開発のため遺伝子研究などを進めています。

U30へ「チャレンジなくして進歩はない」


白井良
U30世代に向けてメッセージを伝える白井良会長

NYNJ大林:ネクストミーツは「代替肉で地球の未来をつくる」と掲げていますが、最後にU30世代に伝えたいことを教えてください。

白井:我々は「地球を終わらせない」という言葉でやっています。本当にその覚悟でやってています。正直利益はそんなに考えていません。ビジネスを始める時には怖さもリスクもありましたが、自分たちのためじゃなく子どもたちやこれから生きていく全ての命のためにやっているという自負があります。いま人生のほとんどの時間をここに費せていることが嬉しいです。

そのうえでU30世代の皆さんに言いたいのが「自分に正直に、良心に基づいて意思を貫いてほしい」ということ。そうすれば人を幸せにして、それによって自分も幸せになります。このような好循環があれば、もっと良い世の中になると思います。「こう言われたらどうしよう」とか、そんなこと言ってたら何も始まりません。すべてがチャレンジです。チャレンジなしで進歩はありません。

取材を終えて


「誰一人取り残さない」世界を実現するためにも、持続的に食を供給できるシステムを構築することは不可欠です。ただそのためには畜産業、代替肉、フードロスといったように個々の問題を区切って考えるのではなく、包括的な解決を目指すことが必要だと感じました。生産側、消費者という2者だけでなく、その間を担う流通や貿易、国際的な協力体制、そうした「重なり合い」によってサステイナブルな食が広く行き渡るのだと改めて思いました。また、フードテックのようにクロステックがもつ無限の可能性に気付くこともできました。テクノロジーを融合させ、よりソーシャルグッドな未来に向けて、その期待は高まるばかりです。


白井良◎連続起業家。26歳のときに勤めていた証券会社を辞め、中国の深圳市にて起業。日本の環境技術を海外で展開しようと挑戦するが、幾度の失敗を経験する。その後、3度の事業売却を経て、最後の仕事として代替肉の事業を現・代表取締役の佐々木と共に立ち上げ、いまに至る。次世代の子どもたちに明るい未来を託すべく、日夜代替肉事業に取り組んでいる。


連載:「U30と考えるソーシャルグッド」
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文=大林香穂(NO YOUTH NO JAPAN)

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