ビジネス

2021.07.09

赤字でも多額の資金調達 米国「屋内農業」ビジネスのいま

アップハーベストのトマト栽培 (c)AppHarvest


このように期待を集める屋内農業だが、その販売実績は、今のところはささやかなものだ。屋内で栽培された葉物野菜を販売するブランドの上位20社を合計しても、米国での売上高は1億3500万ドルに過ぎず、販売店舗も2万2000店にとどまっている。どのトップブランドでも、単独で見ると販売店舗が3000店に達したものはなく、全米の食料品店の売り場に占める割合も3%未満だ。

現時点で、販売店舗が2500店と最も多いのは、クローガーやウォルマートなどを顧客とするブライトファームズだ。2010年創業の同社は、2020年10月に過半数の株式を、コングロマリットのコックス・エンタープライズに売却している。

需要について心配する必要はない?


モンタナ州を拠点とし、カーギルやフィデリティといった巨大企業からの出資を受けるローカル・バウンティと、ニュージャージー州ニューアークの製鉄所跡地で世界最大級の垂直農場を運営するエアロファームズは、2021年内にSPACを使った上場を予定している。だがどちらの企業も、現在は赤字であるうえに、流通経路が限られているという課題に直面している。

エアロファームズの最高経営責任者(CEO)で共同創業者のデービッド・ローゼンバーグは、「我々は、公開市場の力を利用し、資本効率の良いかたちで企業規模を拡大しようとしている」と語る。

創業から17年になる同社は、規制当局の承認が得られ次第、2021年夏に上場を果たす予定だ。「当社が進出しているスーパーマーケットが、数百店でも、数千店でもかまわない。このビジネスモデルの有効性を証明するには、数百店舗で十分だったと感じている」と、ローゼンバーグは述べる。

2021年2月に上場したアップハーベストは、ケンタッキー州を拠点としてトマトの温室栽培を手がける企業だが、同社は6月後半、米国東部のアパラチア地域に第4、第5の栽培施設を建設する画期的な計画を発表した。しかしその株価は、2月の公開時と比較して半値以下にまで落ち込んでいる。アップハーベストは第1四半期に380万ポンド(約1723t)のトマトを販売し、純売上高は230万ドルだった。その一方で、同社の時価総額は15億ドルに達している。


アップハーベストの栽培場 (c)AppHarvest

アップハーベストのデビッド・リー社長は6月24日、「インドア・アグ・テック・カンファレンス」の席上で、「需要が非常に大きく、我々の生産が追いつかない状態だ。需要については心配する必要はない。我々が留意すべきなのは、高い品質基準と供給、そして財務的に持続可能な状態を保つことだ」と発言している。

「我々は現在、銀行からの融資を非常に低コストで受けられる状態だ。希薄化を招かない仕組みが整っており、状況は今後もますます改善していくだろう。経営にはかなりの余裕がある状態だ」

非公開の屋内農業企業


公開の屋内農業企業 ※上場予定を含む

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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