ビジネス

2021.07.11

CMOが語る、CEOとの違いと果たすべき役割

DX JAPAN代表 植野大輔(左)とStrategy Partners 代表取締役、M-Force 共同創業者 西口一希西口一希(右)


まず、専門性の知識が十分にあること。もう1つは、自社のバリューチェーンと顧客戦略の関係を理解していること。何の価値を、誰のために生み出しているのか理解したうえで、それを生み出す仕組みであるバリューチェーン全体を理解し、そのなかで自分の仕事を位置づけられる人ですね。例えばCIOやCTOであれば、専門である技術をどう使うか。それだけでなく、ほかのバリューチェーンと組み合わせ、どういう価値を生み出せるか考える人です。

植野:優秀なCEOとCxOの条件が重なるのは、彼らが経営の一端を、バリューチェーン上の自分の専門である「陣地」で担っている証しですね。

西口:そこでやることは2つだけです。その陣地でどうコストダウンを図るか、そこからどんな付加価値ををつくれるか。これはCIOやCTOだけでなく、CHROなど、どの陣地でもできるはずです。

植野:最後に、スタートアップでも大企業でもCxOを目指したい人にアドバイスがあれば。

西口:できるだけ失敗を含む経験を20代で多くしたほうがいいですね。疑似的にでもPL責任をもった状態が好ましいです。バリューチェーンを理解しながら、顧客戦略をどう成立させるか、これって実はPL責任のことなんですよ。

植野:大企業だと失敗しても、下手したら経緯書を書いて終わりかもしれませんから。

西口:大企業は行かないほうがいい(笑)。だから、自分のお金で何か起業してみる。シンプルなのは、例えば自分でコーヒーショップを開いてみたらいい。おそらく高確率で失敗しますが、コーヒーを提供するために店のコストから豆のコストから全部計算してやると、コーヒーを飲むお客さんは誰で、何に対してお金を払ってくれ、どうしたらリピートしてくれて……と顧客戦略のバリューチェーンが理解できます。最初に絵を描いた時点で相当難しいと気づきますが、さらに実際やらないとわからない。企業の場合もその複雑性が増すだけで同じですから、そんな経験を早いうちにすると糧になりますよ。

「CxO」のビジョン、三カ条(西口一希)

一、専門的な知識を十分に備えるのは必須条件。
二、自社の「バリューチェーン」と「顧客戦略」を把握すべし。
三、自らの「陣地」の最終責任者という覚悟をもて。


西口一希◎1990年大阪大学経済学部卒業後、P&Gマーケティング本部でブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。2006年ロート製薬入社、執行役員マーケティング本部長としてスキンケア、医薬品、目薬など60以上のブランドを担当。2015年ロクシタンジャポン代表取締役。2017年スマートニュース入社、日本と米国のマーケティング担当執行役員。2019年より現職でビジネスコンサルタント、投資活動に従事。

植野大輔◎DX JAPAN代表。早稲田大学政治経済学部卒業、MBA取得、商学研究科博士後期課程単位満了退学。三菱商事入社、ローソンへ約4年間出向、PontaカードなどのDXを推進。ボストンコンサルティンググループを経て、ファミリーマートへ。ファミペイの垂直立ち上げなどDXを統括・指揮。2021年よりANDPAD上級執行役員CMO。

文=神吉弘邦 写真=大竹ひかる

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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