ライフスタイル

2021.07.11 18:00

メゾンの歴史を守りたい ヴィタリー・テタンジェ社長と家族の奮闘


シャンパーニュで育ったヴィタリーだが、母親の影響でアートなどに興味を持ち、シャンパーニュの経営とは全く無縁で、特に興味もなかったという。学生時代はアートを学び、その後もその世界でキャリアを築いた。

転機となったのは、2004年のメゾンの売却劇だ。ヴィタリーはこう振り返る。

「父が奮闘する姿を間近で見て、自分も力になりたいと思いました。家族が買い戻してから、手伝いたいと申し出ました。父は、最初反対しましたが、徐々に認めてくれたのではないかと思います」

結果として、この売却からの買い戻しは、家族の絆を深めることになった。


ヴィタリー・テタンジェ(左)

ヴィタリーは、まずは、マーケティングのコンサルタントとしてメゾンに参画。生来のカリスマ性と魅力的な人柄で、次第にメゾンの“顔”として認知されるようになり、周りの信頼も得て、2020年に社長に就任した。

特級村のブドウで造るシャンパーニュ


テタンジェのプレスティージュ・キュヴェが、「コント・ド・シャンパーニュ(Comtes de Champagne)」だ。過去にも紹介しているが、シャンパーニュの最良のブランドブラン(シャルドネ100%で作るシャンパーニュ)の一つだ

コント・ド・シャンパーニュは、クラシックで重厚。単一収穫年のシャルドネ100%で、高品質で優良な年にしか造られない。

テタンジェは、シャンパーニュ中に広大な自社畑を持ち、長年の契約農家や協同組合からのブドウとあわせて、ワインを造る。コント・ド・シャンパーニュは、その中でも、シャルドネの銘醸地と名高いコート・デ・ブラン地区にある特級村のブドウのみが選ばれている。

直近のリリースは、長期熟成の可能性を持つ、偉大なヴィンテージとなった2008年。成熟したリンゴ、洋梨の果実に、カスタードやレモンタルト、若干の香ばしいコーヒーやキャラメルのニュアンスが加わった、壮大なスケールのワイン。シャンパーニュ好きなら飲むべき逸品だ。


Comtes de Champagne 2008

ヴィタリーには、マーケティングを担当する兄がいる。そして彼女は、「わたしたち家族にとって、誰が社長かは関係ありません。これからも家族で力を合わせて前に進みます」と話す。

家族で一丸となってメゾンを引っ張っていく、今後のヴィタリーの活躍とテタンジェの躍進に期待したい。

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
連載記事一覧はこちら>>

文=島悠里、写真=ワイナリー提供、島悠里

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事