著書である『世界最高の話し方──1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』(東洋経済新報社)も、7刷12万部を超えるベストセラーとなっている。
そのコミュニケーションノウハウがいかに素晴らしいのか、実際に岡本氏にコーチングしてもらった。“伝授”されるのは、初めての著書『「自宅だけ」でここまでできる「子ども英語」超自習法』(飛鳥新社刊)を上梓したばかりの翻訳家・鹿田昌美氏だ。
普段は人前で話すことがほとんどない「究極の黒子」とも言える翻訳家が、どうしたら自著を効果的にプレゼンテーションできるのか。伝説の家庭教師がそのノウハウを開陳する。
自己紹介の「要約」はNG
岡本:さっそくですが、いつもされている感じで、簡単にプレゼンをしてみていただけますか。まずは自己紹介からお願いします。
鹿田:実はこれまでプレゼンをしたことはほぼありません。翻訳家にはあまり必要ないのです。プレゼン資料も作ったことがないのですが……。自分についての「説明」でよければ。
岡本:では、まず説明で結構です。
鹿田:私は、22年間にわたって70冊以上の世界の本を日本語に翻訳してきました。とはいえ、私自身は帰国子女ではありません。中学に入学して学んだのが初めての英語との出会いでした。翻訳という専門職につくことができたのは、その後、自力で英語力を身につけたからです。
翻訳をしていくなかで気がついたことは、意外にも「英語力の基礎はリスニングだ」ということでした。そしてそのリスニング力を身につける場所は自宅が一番、という結論に達したのです。
岡本:いまのは、「世界最高ではない」自己紹介でしたね(笑)。
まず、「22年間、翻訳をやってきました」と、長いキャリアを一気に駆け抜けられましたよね。正直、「22年間で70冊、すごいな」とは思っても、その「絵」がまったく浮かばない。
もう少し鹿田さんの人となりがわかるエピソードか、あるいはデータ、実例はないのでしょうか? たとえば「70冊の世界の本を訳した」よりも、「訳した本は『累計何万冊』」のほうがインパクトがあります。
鹿田:売れ行きでいえば、ドラマにもなった『ゴシップガール』(セシリーV.Z.著)シリーズの全巻は累計27万部を超えましたし、『いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55』(トレーシー・カチロー著)は13万部超えのベストセラーになりました。
岡本:なるほど、それをプレゼン内容に織り込むと、格段に聴く人の心に響きますよね。
みなさん、自己紹介はだいたい「要約」されるのです。ご自身のキャリアは自分でいちばんわかっているので、ついつい1つのセンテンスでまとめてしまう。でも、それではあまりにももったいない。経歴の「1シーン」ごと、それぞれの誇るべき業績や物語にスポットを当てて、立ち止まりながら進む。これが重要です。