「17LIVE」を進化させるのは生物学の修士号を持つリーダー

17LIVE代表取締役社長/Global CEO, 17LIVE inc. 小野裕史


小野が感情にこだわるのは、彼の出自がポイントなのではないだろうか。彼は東京大学大学院理学系研究科生物科学で修士号を持つ。
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「卒業後も研究を続けていましたが、当時主流のサービスだったiモードで人生が変わったかもしれません。何の影響力も無いひとりの人間が、手元の端末で世界とつながるわけです。そこから畑違いのITの世界、そしてベンチャーキャピタルの世界に身を置き、10数社を誕生させ、育て、大きくしてきました」

地元のつながりでモノを売り買いする「ジモティー」を生み、また世界有数のファッション通販サイト「FARFETCH」を日本に定着させるなど、資金回収だけではない企業の成長を核とした投資を行なってきた小野。生み出し、成長させることに注力するのは生きものを扱う生物学に通じる。

「17LIVEは台湾で創業されて以降、投資先として関わっていましたが、日本でのライブ配信の可能性を託され、以来、17LIVEの成長を支えてきました。生物の文脈で過程を話すと長くなりますが、言えるのはこのサービスが持つ重要な感情の側面は、私たちホモ・サピエンスが持つ特性でもあるんです」
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ヒトだけが持ちうる感情の共有が大事だという。そしてもう一つ、感情の他に、与える・力になれる喜びもある。



ギフトはクラファンのようだ


ライブ配信に限らず、動画投稿サイトやSNSでもいわゆる投げ銭の仕組みがある。中には「億」の額に到達する配信者が登場するなど、加熱を憂慮する声も出るほどだ。

もちろん17LIVEにもギフティングと呼ばれる投げ銭機能はある。この仕組みをどう使うかはユーザーの判断ではあるが、時には良い印象を持たないこともある。それも価値の一つと小野は言う。

「17LIVEは個人が誰かと繋がって価値観を共有しあえる。そこに『イイね』だけではない気持ちの形としてのギフティングがある。これはクラウドファンディングやNFTに近い発想かもしれません。個人の価値に経済的な価値がつくことが次のアーティスト(表現者)を産むかもしれない。約400年前から存在している歌舞伎の時代からの言葉ではありますが、投げ銭という単語が誤解を与えているかもしれませんね」

デジタルの世界での価値に応える行為が、ギフティングという画面上のシンプルなアクションに適していることもあるだろう。他方、ギフティングの仕組みは社会的な価値を生む場合も多い。

「コロナ禍では17LIVEでもさまざまな事例が生まれました。ライブを行えないミュージシャンの自宅での配信にギフティングを通じて支援したり、休業を余儀なくされた猫カフェでは猫の様子を配信で見てもらい、お店の人にギフティングをすることで運営維持への協力をするなどです。また、コロナ禍以前においても大きな災害時には、私たちが特設アカウントを作って支援を募り、赤十字社に寄付するなど多用な活用につながっています」

17LIVEが生まれた台湾では、先の大統領選挙の際に対立する2人の候補の陣営が17LIVEで配信を行い、候補者自身も登場した。議論に加えてギフティングが行われるなど、様々な活動にも使われるようになっている。

「コミュニケーションのエンタメからスタートした17LIVEのサービスは、感情を繋げるプラットフォームを目指しここまで成長しました。社会的な価値を生む機会も作り始め、さらに新しい17LIVEになっていくでしょう」

マーケットやユーザーに合わせその性質を変化させたように見える17LIVE。これからも根底にあるのは、感情のある価値観の共有だ。

文=Forbes JAPAN 編集部 写真=西川節子(人物)

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