グーグルと米国防総省の「親密ぶり」を示す契約書の中身

Photo by Drew Angerer/Getty Images


これまでのところ、国防総省がグーグルの技術を新型コロナウイルス対策以外の用途に用いた様子は見られない。しかし、元グーグルのデータサイエンティストで、倫理的な懸念から同社を退職したJack Poulsonは、契約で禁止事項を定めなければ、他の目的にツールが使われかねないと警鐘を鳴らす。

彼は、北方軍傘下で麻薬戦争や対テロ対策に携わる北方統合任務部隊(JTF-North)がグーグルの技術を利用する可能性があると指摘している。

「税関・国境警備局によるグーグルクラウドの導入において、契約文書には明確な禁止事項が定められていない。このため、コスト効率を高めるために技術の利用範囲を最大化させることが懸念される。例えば、北方統合任務部隊による国境や麻薬戦争の監視での利用が考えられる」とPoulsonは述べている。彼は現在、ビッグテックの倫理面について注意喚起をする非営利組織「テック・インクワイアリー」(Tech Inquiry)の代表を務めている。

北方軍の広報担当者は、同軍が麻薬戦争や対テロ対策の監視にグーグルの技術を使っていないと明確に否定した。グーグルが2028年に公表した「AI技術開発の原則」(AI Principles)は、国際的な規範に違反する監視に用いる技術の開発を禁じているが、あらゆる監視がこの原則に反している訳ではない。

グーグルのAI技術を用いて、国防総省のドローンが撮影した画像から車両や建物を発見する「Project Maven」に多数のグーグル社員が反発したことを受け、同社は「AI技術開発の原則」を作成した。社員たちは、公開書簡の中でグーグルに対し、軍事テクノロジーの提供を永久に停止することを求め、同社はProject Mavenへの協力を中止した。

グーグルは、政府への新型コロナウイルス対策をはじめとするシステム提供を誇りに思っている。フォーブスが昨年報じた通り、同社はワシントンD.C.周辺を拠点とする複数の請負業者を介して政府に技術を販売している。その一例が、税関・国境警備局に200万ドルで提供した人と貨物を監視する「Automated Targeting System」だ。

編集=上田裕資

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