米国で、モバイル決済アプリやデジタルウォレットの苦情が急増

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米国では、現金払いをやめてデジタル決済を利用する人がますます増えている。それに伴い、モバイル決済アプリやデジタルウォレットに関して消費者から寄せられる苦情も急増中であることが、消費者団体のPIRG(米国公共利益調査グループ)による新たな報告書で明らかになった。

報告書によると、米消費者金融保護局(CFPB)が「モバイルウォレットやデジタルウォレット」に関する苦情を受け付け始めた2017年4月から2021年4月までに寄せられた苦情は9277件に上った。初年度の苦情件数は1000件強だったが、2020年5月から2021年4月までの1年間でCFPBが対応した苦情は5200件を超えた。2021年4月の1カ月間だけでも、デジタルウォレットに関する苦情は970件と、前回に最多件数を記録した2020年7月の2倍近くに上ったと、報告書には書かれている。

報告書では、企業のデジタルウォレット製品、もしくは銀行口座に紐づけされているサードパーティーのデジタルウォレットに関する苦情が分析されている。それによると、ごく少数のプラットフォームが苦情の大部分を占めており、3分の2が、わずか3つのプラットフォームに集中していた。その3つとは、「ペイパル」(個人間送金アプリ「Venmo」の親会社)、「スクエア」(個人間送金アプリ「Cash App」の親会社)、暗号通貨取引所「コインベース」だ。

決済サービス「ペイパル」に加え、デジタルウォレット・プラットフォームVenmoも運営しているペイパルは、苦情件数が全企業中で最多となったが、ユーザー基盤の大きさを考えればそれほど驚くことではない。2017年4月から2021年4月までにペイパルに関して寄せられた苦情は4431件にのぼる。その主な内容は、モバイルウォレット口座の管理、開設、解約や残高の引き出しについてだった。

2位は、ツイッターの最高経営責任者(CEO)、ジャック・ドーシーが創業したスクエアで、1202件の苦情が寄せられた。最も多かったのは、不正取引に関する苦情だった。

3位はコインベースで、暗号通貨の売買ができるデジタルウォレットサービスを提供していることは注目すべき点だ。デジタルウォレットに関する苦情が755件寄せられたなかで、最も多かったのはやはり、モバイルウォレット口座の管理、開設、解約をめぐる苦情だった。コインベースに対しては、「仮想通貨」という製品カテゴリーでも2182件の苦情が寄せられており、同カテゴリーの企業中で最多だったと報告書は指摘している。

米国のデジタル決済ユーザーは法律上、クレジットカードやデビットカードの利用者と同程度の消費者保護を受けられないため、今回の報告書の内容は気がかりだ。たとえばクレジットカード利用者は、連邦法の貸付真実法(Truth in Lending Act)と公正信用請求法(Fair Credit Billing Act)で、損失限度額が50ドルと定められている。デビットカード利用者についても、電子資金移動法(Electronic Fund Transfer Act)で、詐欺による損失限度額が決まっている。これにより、デジタルウォレットのユーザーもある程度は保護されるが、フィッシング詐欺や、間違った口座への送金などの人為的ミスに対しては脆弱なままだ。

ユーザーの不満は、デジタルウォレット・プロバイダーが提供するカスタマーサービスが低品質であることが原因となって悪化するケースが多いと、報告書は指摘している。

デジタルウォレットとデジタル決済アプリに関して米連邦機関に寄せられた、企業別の苦情件数(2017年4月から2021年4月まで)*



*企業のデジタルウォレット製品、もしくは銀行口座に紐づけされているサードパーティーのデジタルウォレットに関する苦情

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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