米連邦裁判所が、こうした独占は問題ではないという判断を下したことは、非常に残念だ。私はフェイスブックを見て、映画『メル・ブルックスのサイレント・ムービー』に登場する企業エンガルフ&デボアを思い出した。ピラミッドの頂点に座り、世界25億人以上の行動を細かく監視するマーク・ザッカーバーグ。彼は非常に小さな動きやトレンドまで検知でき、競合となりそうな会社は片っ端から買収するか、その製品を必要な限り繰り返し模倣する。時には、その魅力を理解するため、競合企業のユーザーにアンケート調査すら実施する。
一度の過ちが致命傷となる熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられる交流サイト(SNS)の世界で、ザッカーバーグは今や、自分がどんなルールも超える存在だと考えている。その地位を維持するためなら、悪魔との取引もいとわないだろう。
フェイスブックの独占を裏付ける十分な証拠がないなどと裁判官が判断したことは、理解し難い。カモのように見え、カモのように泳ぎ、カモのように鳴く鳥は、おそらくカモだ。フェイスブックは単なる独占ではなく、独占の定義そのものなのだ。
米国と中国はこれまで長期間にわたり何も対策を取ってこなかったが、ここにきてようやく、テック大手制御に長く取り組んできた欧州連合(EU)の後に続き始めている。このたびの米裁判所の判決は残念なことに、米国が長い間待ち過ぎたこと、こうした大規模な独占はもはや法律を超越していることを示しているようだ。