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2021.07.02

1年で生徒数2.5倍の金融教育 ABCash成長のカギは特化戦略にあり 

ABCashの代表取締役 児玉隆洋(撮影:林孝典)

金融リテラシーが低いと言われる日本で、金融教育を提供するABCashが伸びている。2018年に起業してから生徒数は、コロナ前から約1年で2.5倍に増加した。

ABCashは、お金のプロ(ファイナンシャルコンサルタント)による3カ月のマンツーマントレーニングを提供している。家計管理の基礎知識から、保険の選び方、貯金を増やすポイント、株式投資などを学ぶことができ、週1回60分の講座と毎日のチャットによる収支報告など、手厚いサポート体制だ。

ミレニアル女性に絞り込み


ABCashの代表取締役、児玉隆洋が金融教育に興味を持ったのは、大学時代、警察官だった父が突然病気で倒れたことがきっかけだ。当時すでに起業への意欲を持っていたこともあり、「(東京から地元宮崎に帰って)自分が家族を支えなければならないのでは、挑戦できなくなるのでは」という危機感に襲われたという。

卒業や就職はできたものの「お金の不安なく挑戦したり、自由なライフスタイルを送れるような社会を作りたい」という想いから、当時勤めていたサイバーエージェントを辞め、2018年に「ABCash」を起業した。

児玉は、事業を進める上で前職での教えを活かしている。

「最初はターゲットを特化してクオリティの高いサービスを提供することが、中長期で飛躍するサービスになる」。児玉のロールモデルでもあるサイバーエージェントの創業者、藤田晋がよく口にしていた言葉だ。児玉はミレニアル世代の女性にターゲットを絞った。

ABCash児玉隆洋
撮影:林孝典

理由は「ライフステージの変化が大きい」から。子育てや結婚、出産など、変化が激しく、経済的な不安を感じやすいこの世代に向け、サービスを開始した。

しかし、事業を始めた頃は、金融商品を売りつけるようなイメージから「怪しい」と揶揄され、ほぼ1年間、利用者が来ない苦しい時期もあった。

利用者に無料で提供する初回の講座では、「儲かる株は?」「ビットコインって、1日でお金倍になりますか?」といった質問が飛び、児玉の事業への想いと、利用者からの見方には大きくズレがあった。

老後2000万円問題、後押し


苦境から抜け出す契機となったのは、2つの出来事だ。ひとつは、2019年に話題となった「老後資金2000万円問題」。「老後の資産形成が必要になる。もう国が守ってくれるのではなく、自分たちで備える時代になったという意識が形成され、日本全体で流れが変わった。あれはまさに時の運」だと児玉は振り返る。

もう一つは、タレント・ローラの起用だ。
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文=露原直人 撮影=林孝典

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