フットウェアのカテゴリで市場を分け合う両社は、共有する「脱炭素」という共通の大きな目的に向けて、知見や技術を共有し合い、革新的なシューズを生み出した。「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」と呼ばれるそのシューズは、史上初めてカーボンフットプリント(CO2換算排出量)3Kg以下を実現。それでいて、アスリートも認める機能性を維持し、高いデザイン性を誇る。
ライバルの提携はどのように生まれ、今後の業界や社会に何をもたらすのか。アディダス ジャパン副社長のトーマス・サイラー氏と、オールバーズ日本法人代表の竹鼻圭一氏に聞いた。
カーボンフットプリント削減への道
ビーガンレザーやリサイクルポリエステルの採用、海洋保護団体「PARLEY FOR THE OCEANS」との提携など、アディダスは特に近年、サステナブルに関する動きが顕著だ。しかしサイラー氏によると、同社は30年以上前から環境保護の取り組みを続けてきた。
「アディダスには『スポーツを通して、私たちには人々の人生を変える力がある』という大きな軸があり、サステナビリティはその中の重要な柱の一つです。長年、積極的には発信してきませんでしたが、2015年に前CEOが“海洋ゴミでできたフットウェア”を発表したことから流れが変わりました。現時点では、2025年までに製品の90%をサステナブルな形で作ること、2030年までにカーボンフットプリントを30%削減することを目標に掲げています」
他方、2015年に創業したオールバーズは、「より良いものを、より良い方法で」をミッションに掲げ、当初から環境に配慮したモノ作りにコミット。中でも、ウールやユーカリ、サトウキビなど自然由来の素材の開発を推し進めてきた。
「数量制限、リサイクル、アップサイクル、いずれも正しいと思いますが、素材選定から製品が破棄されるまでの全ての工程においていかにカーボンフットプリントを減らすかに重きを置いています」と竹鼻氏は言う。「そして、サステナビリティに関しては、気候変動を“逆転させる”という目標を立てています。2030年までに商品のカーボンフットプリントをゼロ、ゆくゆくはゼロ以下を目指しています」