ビジネス

2021.07.05

コロナ禍で反転。イスラエルで起きるスタートアップへの大量の資金投下

photo by KingMatz1980 / iStock


イスラエルスタートアップおよび米国で登録された「イスラエル関連」のスタートアップに投資するVertex Ventures IsraelのゼネラルパートナーのDavid Heller氏は「2020年1月まで、弊社が投資した3社がユニコーンに成長したが、1年半後の現在は実績が8社に。つまり、コロナ禍に、Vertex Israelがシードまたはアーリーステージで投資したスタートアップ企業5社(2015年~2018年)が成長し、新たにユニコーンとなった。9社目も近日中に発表される予定だ」と語る。

これまでイスラエル起業家は、自分のスタートアップをアーリーステージで高値で売却する傾向があった。主に知的財産とエンジニアリングチームを目的とした外国企業に買収され、買収後はイスラエルにある外国企業の研究開発センターの一部となっていたのだ。

しかし、ここ3~4年で、スタートアップをスケールアップさせ、スタートアップの収益を伸ばし、ユニコーンへと導くことを意識するイスラエル起業家が増えてきた。また、積極的なエグジット環境(NASDAQでのIPOやSPAC、M&A)も整っており、成長が証明されたイスラエルのスタートアップ企業の成功が報われている。

日本企業の意思決定の遅さが、競争を困難に


Heller氏は、京都大学で法学の修士号を取得し、東京の法律事務所で働いた後、1995年にイスラエルに帰国し、最初のVC設立に向け日本およびアジア(韓国、中国、台湾、香港、インド)から資金調達を開始。Vertex Ventures Israelは、イスラエルのすべてのVCの中で、日本のLPやアジアのLPとの付き合いが25年と最も長く、日本からの資金調達額も最も多い。また、そのファンドには、金融機関や事業会社など、日本のLPが最も多く含まれている。

Heller氏に日本企業がアジアでの競争に勝つにはどうしたらよいか聞いた。

「Vertex Ventures Israelはこれまで日本の企業LPとイスラエルスタートアップ間で多くの取引(技術移転、IPライセンス、販売権、製造権など)の締結を支援してきた。しかし、残念ながら、一般的に、中国、韓国、台湾の投資家は、日本の投資家に比べて意思決定のスピードが速いと言われており、私自身、日本企業がイスラエル企業の買収に興味を持ったものの、中国や韓国の企業の方が意思決定や買収提案が早かったというM&A案件に何度か関わったことも。これは凄く勿体無い。

M&Aの機会を獲得するためには、たとえそのスタートアップがまだ買収の準備ができていなくても、イスラエルスタートアップ企業と非常に早い段階で接触し、その技術や強み・弱みをできるだけ研究しておくことだ。そうすることで、M&Aの機会が訪れた際に、より迅速な意思決定を行えるだろう」

コロナ禍において、より世界からの注目を集め、ユニコーン企業をハイペースで輩出し始めたイスラエルのスタートアップ界で日本企業が存在感を示すためにはどうしたら良いのか。真剣に考えなければならない。

連載:イノベーション・エコシステムの内側
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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