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2021.07.05

コロナ禍で反転。イスラエルで起きるスタートアップへの大量の資金投下

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昨年から今までの日本企業とイスラエルのオープンイノベーションの事例


日本企業によるイスラエル・スタートアップとの連携は、IT、サイバーセキュリティを筆頭に、デジタルヘルス、バイオ、創薬、モビリティ、フィンテックと、幅広い分野で進んでいるが、新たな動きも出ている。

栗田氏は「昨年から目立つようになってきたのが、フィンテック/インシュアテック関連だ」と指摘する。みずほ銀行がBioCatch社とスマホの操作等の行動的生体認証技術を用いた金融詐欺の防止に関する共同実証実験を開始し、三菱UFJファイナンシャル・グループはFundbox社、ChargeAfter社、Luquidity Capital社に立て続けに投資。また、保険分野でも、既にイスラエルで大きなプレゼンスを築いているSOMPOグループに加え、MS&ADインシュアランスグループも傘下の三井住友海上火災保険がイスラエルの保険会社とともに共同ラボをイスラエルに設置することを発表し、グループとしても複数の投資を実行するなど、昨年から今年にかけてイスラエルでの活動を活発化させている。

昨年下半期頃からは、アグリテック/フードテックにも動きがある。クボタは、AIやドローンによる果樹の健康診断サービスを手がけるSeeTree社やドローンによる果樹収穫サービスを手がけるTevel Aerobotics Technologies社に出資をしたほか、イスラエルのアグリテックに関するイノベーションハブとも提携を発表。DICも、健康食品での事業拡大を狙い、藻類の培養技術を有するVaxa Technologies社への出資を行った。三菱商事もアグリテック/フードテック分野に特化した投資機関との提携を発表している。

野菜の栽培をテクノロジーで管理する写真
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また、航空宇宙関連分野やグリーンテック分野、量子コンピューター分野など、これまでにない切り口での連携も増加した印象だ。さらには、武蔵精密工業(自動車部品)、TPR(自動車部品)、ユー・エス・エス(中古車オークション)、タツタ電線(エレクトロニクス)、ミツトヨ(精密測定機器)といった企業とイスラエル企業との連携が相次いでいる」と語り、日本におけるイスラエルへの関心の裾野が拡大しているとわかる。

イスラエル発ユニコーン企業


Start-Up Nation Centralの副社長兼事業開発担当のJeremie Kletzkine氏は「この6カ月間だけでも、15社以上のイスラエル企業がユニコーンの地位を獲得した。ここで成長したユニコーンは、サイバー空間(Cybereason、Snyk、SentinelOne)、決済・eコマース業界(Tipalti、Forter、Gong、Rapyd、SimilarWeb、YotpoまたはGlobal-E)、給与管理(Papaya Global、Deel)、データストレージ(Vast)、モバイルゲーム(Moon Active)、またはその他のAIアプリケーション(Verbit)などだ」と語る。

2013年に設立されたStart-Up Nation Centralは、イスラエルのイノベーション・エコシステムへのゲートウェイとして、知識、リソース、業界や政府の主要な関係者とのネットワークを活用し、イスラエルの革新的な技術ソリューションを世界中の多国籍企業、政府、投資家、NGOと結びつける非営利団体だ。彼らが運営するオンラインプラットフォームStart-Up Nation Finderは、何千ものイスラエルのハイテク企業に関する最新の情報と洞察を提供しており、顧客の関心事に基づいてイスラエルの組織と繋いでいる。

Kletzkine氏は「イスラエル人は破壊的なコア・イノベーションをデザインすることに長けており、日本は製品を最高の形にして世界市場に送り出すことに優れている。両国が協力する上での最大の障害は地理的な距離だけだ。Start-Up Nation Centralはこのギャップを埋めるために努力している。日本にはFortune Global 500に選出された企業の10%が拠点を置き、イスラエルには4000社以上のB2Bスタートアップ企業が存在する。これをチャンスと捉え、両国でより協力し合いたい」と語った。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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