昨年の同イベントで優秀賞を受賞したのが、農作物の収穫ロボットビジネスを手がけるAGRISTの高橋慶彦だ。人口減少が進む日本の農業を、高橋はいかにしてアップデートしようとしているのか。
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──まずは、自動収穫ロボットの事業を手がけることになった経緯を教えてください
今後、農業をやめられる高齢の農家さんが増加し、空き地や空きハウスが増えてきます。自動化や省力化に着手しなければ、持続可能な農業を実現していくっていうのは非常に難しくなる中、私たちは宮崎県新富町で生産の盛んなピーマンの収穫ロボットの開発に取り組み始めました。
今世にある、作物を認識して収穫を行うロボットは、ほぼ全て地面を走るタイプです。これに対して、AGRISTはハウスにワイヤーを張り、吊り下げる方式をとっていることが大きな特徴です。
作物によっては、かなり高いところまで育ちます。地面に置いたロボットに高い位置にある作物を収穫させようとすると、安定性の確保が課題となり、機体の重量も増えて高い値段になってしまう。そこで、農家さんが導入しやすいように、私たちは吊り下げ方式にすることで、安さを追求しながら開発しています。現在日本国内および国際特許を申請していますので、販売面でも他社に対して優位な立ち位置にいると自負しています。
ピーマン農家20%への導入目指す
──販売戦略について教えてください。
初期費用は150万円で導入させていただき、その後は農家さんがロボットで収穫した野菜の売り上げから10%をいただくという(レベニューシェア型)サービスとして提供する計画です。現在、県内の6つのピーマン農家さんでロボットの実証実験を進めていますが、今年の9月には農家向けのショールームを開設し、サービスの試験運用に向けた利用予約を受け付けます。実際に利用ができるようになるのは2022年以降の予定です。
最初は、収穫量の規模拡大や、より強い経営をしていきたいと考えている30代後半から40代前半の農家さんがターゲットです。そして2025年までには、宮崎県内のピーマン農家さんの20%に使ってもらうことを目指しています。
ビニールハウス内を吊り下げで移動する自動収穫ロボット(提供:AGRIST)
ロボットは、収穫スピードを2個/分に、そして一度の充電で4時間稼働できるように改良を進めています。9月までにそれを100%にできるようにしたいです。
──現状の最も大きな課題は何でしょうか。
ロボットを開発する優秀なエンジニアの獲得ですね。ロボットをアップデートしていくには、実際に、現場で動かして、エラーがあればそれを持ち帰って解決・改善する、ということをひたすらやり続けていく必要があります。農家さんと一緒に、フィールドで動けるエンジニアの採用が重要なポイントなんです。
そのために重要なのは、「100年先も続く持続可能な農業を実現する」というAGRISTが掲げるビジョンにいかに共感してもらうかです。今年末までに25人を目標に採用を進めていますが、現時点で、目標の半数を超える14人(バックオフィス含む)が入社しています。