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2021.07.02

「ミスビットコイン」藤本真衣が体感した暗号通貨10年の荒波

藤本真衣(撮影 Kevin Abosch)


「仮想通貨元年」と呼ばれたその年、ビットコインの価格は1月の最安値8万5000円弱から、12月には230万円強にまで急騰した。東京の都心には取引所の広告のトラックが走り回り、「億り人」と呼ばれる投資家たちがメディアを騒がせていた。藤本は、まさにバブルと言える状況を横目で見ながら、暗号通貨を用いた寄付プラットフォーム「KIZUNA」を立ち上げた。

「ようやくビットコインを使った寄付が実現できる時代が来た」、そう思った矢先に訪れたのが次の暴落だ。2018年1月26日、大手取引所のコインチェックから580億円相当の暗号通貨NEMが流出したことで、市場は一気に冷え込み、年初に200万円を超えたビットコインは、翌年1月には40万円程度にまで落ち込んだ。

しかし、市場を暗澹たる空気が覆い、一攫千金を夢見た投資家が退散する中で、藤本は次の光を見つけ出そうとしていた。その当時、「クリプトキティ」と呼ばれるゲームで業界の話題をさらったバンクーバーの企業「​ダッパーラボ(Dapper Labs)」を招いて開催したのが、2018年11月の「トーキョー・ブロックチェーン・ゲームカンファレンス」だった。


2018年11月17日「トーキョー・ブロックチェーン・ゲームカンファレンス」で講演を行うダッパーラボのBenny Giang(筆者撮影)

クリプトキティは、暗号通貨イーサリアムのブロックチェーン上で猫のキャラクターを繁殖させるゲームで、一体のキャラクターが約2000万円もの高値で取引されて話題となっていた。六本木の地下室の会場に集まったのは60人程度だったが、当日のキーノートは日本のソーシャルゲーム大手gumiを率いる國光宏尚が務め、ダッパーラボの担当者を交えた熱いセッションが開催された。

「暴落しても長期で見ると暗号通貨は絶対普及していく。市場の波なんか関係ない。やり続けるしかない」と、藤本は思っていた。

NFTという新たな鉱脈


それから約2年後の2020年後半から、業界は再び熱狂に包まれた。ダッパーラボはその後、米NBAのゲームを手がけ、始動から数カ月で2億ドルもの売上を叩き出したが、その基盤となったのがクリプトキティに端を発する「NFT(ノンファンジブル・トークン)」と呼ばれる技術だ。

NFTは、デジタル作品と紐付けたノンファンジブル(代替不可能)なデジタルデータの所有権を取引するもので、今年3月のオークションでビープル(Beeple)と呼ばれるデジタルアーティストの作品のNFTが約75億円という驚異的金額で落札されたことで一気に注目度が高まった。
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取材・文=上田裕資

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