「ポイントは貯まるし、デジタルカードで支払いもできるが、家賃で借金漬けになるリスクはない」と、ジェインは言う。
また、Biltカードで支払った家賃の情報を信用調査機関に報告する「信用構築機能」も、無償で提供する。これにより顧客は、自身の信用情報を構築し、高いクレジットスコアを得ることで、自動車ローンの条件がよくなったり、将来的にアパートを借りる際の審査や、住宅ローンの審査に通りやすくなったりする可能性がある。
このアイデアはかなり新しいものだが、信用調査機関に家賃支払いの報告をおこなっているのはBiltだけではない。2021年のフォーブス・フィンテック50に選出されたEsusuとMoCaFiの2社は、入居者が家賃の支払いを信用調査機関に報告するのを無料でサポートしている。ミネソタ州のスタートアップであるLevelCreditは、同様のサービスを月額6.95ドルで、賃借人に直接提供している。
「コンセプトはとてもシンプルだ」
フォーブスの「30 UNDER 30」に選ばれた経験をもつジェインは、31歳にしてすでに連続起業家だ。彼は2017年に共同で創業した保険会社Rhinoで金鉱を掘り当て、現在5億ドルの評価額がついている。同社は、賃借人が高額の敷金を支払うかわりに、少額の月額料金を支払う選択肢を提供している。
これ以前にも、ジェインは2012年に、リンクトインの競合サービスであるHuminを立ち上げた。Huminが2017年にティンダーに売却されたあと、ジェインは約1年間ティンダーのプロダクトチーフを務めた。
アンクール・ジェイン(左)が創業した「Kairos Society」共同創業者のAlex FianceとRyan Bloome(Getty Images)
RhinoとBiltは現在、ジェインが設立し、CEOとして率いているベンチャースタジオKairosの傘下にあり、Kairosは他に3つのブランドを擁する。
開発に3年以上の歳月を費やしたBiltについて、ジェインはこう述べる。「これまで取り組んだなかでもっとも複雑なプロジェクトだが、コンセプトはとてもシンプルだ。大多数の米国人にとって、家賃は突出した最大の出費だ。それなのに、他のどんな出費でも貯められるポイントが、これまで家賃の支払いでは得られなかったのだ」