こうした人々が将来的に家を購入するときに住宅ローンを借りてくれることを見越して、ニューヨーク市に拠点を置くスタートアップBiltは、興味深い長期戦略を打ち出した。現在の賃貸居住者を誘いこむという戦略だ。
「彼らが35歳になって、家を買えるようになってから、顧客の発見と獲得に大金を投じるのではなく、若いうちから密接な関係を築いておこうという発想だ」と、Biltの創業者アンクール・ジェインは説明する。
家賃支払いで貯めたポイントを購入の頭金に
Biltは6月22日、家賃支払いにフォーカスした設計の、新たな特典付きクレジットカードを発表した。家主と借り手のどちらにも手数料がかからないものだ。小切手ではなくカードで家賃を払いたい人にとっては朗報だ。
Biltは当面の収入源として、ユーザーが家賃以外の出費にカードを使用するたびに生じる手数料と、国内最大級の不動産オーナーとのパートナーシップを見込んでいる。ユーザーは貯まったポイントを、航空券やホテル、ジム、さらには連邦住宅局(FHA)や連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)の住宅ローンを通じた住宅購入の頭金に利用できる。
米国の賃貸市場は一様ではないが、Biltによれば、マスターカードと提携したこの商品は、あらゆる賃借人が利用できる。想定されるユーザー層のひとつは、Biltがすでに提携しているブラックストーン、スターウッド、エクイティ・レジデンシャルなどの大手不動産管理会社が運営する、約200万戸にのぼる賃貸住宅の入居者だ。
こうした賃借人たちは、Biltのカードを使って家賃を直接支払うことができるほか、契約更新でボーナスポイントを獲得することもできる。昔かたぎの家主が小切手しか受け付けない場合でも、Biltのアプリを使って家賃を支払えば、Biltが家主に直接小切手を郵送するという。
また、賃借人が借金を抱えることがないよう、Biltはすべてのユーザーが翌月分をカード払いにする前に、当月分の家賃を支払うことを義務付けている。「高リスク」と判断されたユーザーも、家賃支払いからポイントを得られるものの、カードの仕組みはデビットカードに似ており、紐付けされた銀行口座から自動的に即座に家賃分の金額が引き落とされる。