Forbes JAPAN Web編集部

田ヶ原絵里(写真=藤井さおり)

Forbes JAPANは、創業3年目以内のスタートアップ起業家・経営陣を応援するコミュニティ・プロジェクト「Rising Star Community 2021」を始動した。7月1日には、コミュニティメンバーによるピッチイベントを開催する。

昨年の同イベントで優秀賞を受賞したのが、食物アレルギーに焦点をあてたフードテックを手がけるCAN EAT(キャンイート)の田ヶ原絵里だ。スタートアップ企業は創業から3年が事業を軌道に乗せられるかの分岐点といわれているが、彼女はここまでに直面した壁をどう乗り越えてきたのか。

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──テクノロジーを使い、食物アレルギーを抱える人に役立つサービスの提供を目指して、2019年4月、事業をスタートさせました。まずは現在、提供しているサービスについて教えてください。

大きく2つのサービスを提供しています。一つは事業者が食事を提供する前に、客のアレルギーや好き嫌いの有無を確認する「ヒアリングサービス」です。主に結婚式場で使われていて、ゲストは招待状に添付されたQRコードから、アレルギー情報などを入力。式場のレストランは、情報をもとに食事の準備ができます。

もう一方は「アレルギー表作成代行」。飲食店が、キャンイートに加工食品の原材料ラベルの写真を送るだけで、機械が文字認識し、アレルギー表を自動的に作成するものです。

特に、複数のアレルギーを持つ利用者の方にとっては、毎回店に伝えるのが億劫ですが、そういった負担を軽減することができます。

サービス導入時に立ちはだかった壁


──今年で創業3年目を迎えましたが、サービスは当初から順調に導入が進んでいるのですか。

いいえ。創業当時はサービスへの理解をなかなか得られずにいました。例えば、「(アレルギー表示全てが)義務ではない。なぜ自分たちがやらなければいけないのか、アレルギーの人なんか来なくていい」など、事業者からの風当たりは強かった。また、投資家の見方も否定的で、「アレルギーがある人はマイノリティ。市場は広がらない」と将来性を見限られることもありました。

しかし、ヒアリングを重ねる中で事業者の現状を知って、それまでは生活者の視点で考えていたのですが、それだけではダメだと気付いたんです。CSR(企業の社会的責任)だけで人は動かない。社会貢献だけでビジネスは成り立たないなと。

そこで改善をしたのはプレゼンです。サービスの開始当時、世間ではSDGsというワードが流行り始めていたこともあり「顧客のことを考え、社会に貢献しましょう」と訴えていました。創業した19年の冬頃から意識が変わり、プレゼンを事業者視点にスタンスにして、「今アレルギーに対応しておけば(コロナ後の)インバウンドも入りやすい。投資だと考えてみてはどうか」というようにセールストークをするようになったんです。

マイノリティーに対応するサービスは、市場性がないと皆考えるのですが、むしろアレルギー対応ができることを強みにして、お店としての差別化を図っていきましょうと。

すると、 特に最近の販促場である、事業PRの展示会では、高い評判を得られるようになりました。評価を受け始めると、今度は広告代理店から「そのサービスを売りたい」と声もかかることが増えました。創業から2年が経ち、今では「売れる」という確信も持てるようになりました。

実際、ヒアリングサービスは、コロナ禍で結婚式も少ないのですが、サービス開始から半年で約1300人が登録してくれています。宿泊施設などでの利用もあって、特に修学旅行生を迎える時に、宿泊事業者は旅行代理店からアレルギー表やメニューの提出を求められるため、その代行に引き合いがあるのです。

文=露原直人 写真=藤井さおり

起業家

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