これはハンドボール選手時代に、練習で手を抜いた分、大事な試合の時に自分だけでなくチームに返ってきて、1点差で負けるなど苦い経験があるため、手を抜く恐ろしさは身にしみて分かっています。
愛知発・お値打ち、おいしさの秘密
ほぼ具おにぎりは、具材の下の大葉がアクセントになっている
──人気商品「ほぼ具おにぎり」のおいしさの秘密は。
尾張旭店では、魚であれば市場直営の鮮魚、肉であれば肉専門店から仕入れており、具材には相当のこだわりがあります。すべての惣菜は、食材のおいしさを100%引き出せるように、実は大人向けに作っているのもポイントです。
まず、大きなおにぎりをさっぱりと食べられるように大葉を入れているのが特徴で、「子どもが食べられないので抜いてほしい」という意見もありますが、こだわって入れています。また同じ魚でも大きさや匂いが違うので、焼き方や塩加減なども具材ごとに調整しています。
私は家の食事と外食に求める条件は違うと考えていて、家では健康的に塩分を控えようとしますが、外ではお金を払って食べるのでおいしさを追求するのだと思います。やまひこのおにぎりは、一口食べた時にインパクトある味を前面に押し出しています。
──愛知県民の商品の値段以上の価値を求める「お値打ち」という価値観にマッチしているのでは?
私としてはあまり意識していませんが、お客様に喜んでいただけるようにという思いが一番強いです。色々な専門店でスムージーが売られており、結構なお値段がしますが、それよりお得で、その上にフルーツもまるごとついていたらうれしいですよね。
私自身、お弁当のおかずの量や、麺やパスタの具を気にしながら食べたくないんです。いつ食べても具だくさんの方が、もっと自由でいいんじゃないか?と思います。それが「お値打ち」と捉えていただいているのではないでしょうか。
スパイスカレーも具だくさん。盛り付けにもこだわっている
またスーパーの強みもあります。青果、生肉を大量に仕入れるので原価を安く仕入れ、惣菜にもふんだんに具材を使うことができます。
山彦の山田孝彦会長の「正直な商売をしろ」という言葉がいつも心にあります。いま多くの店がフルーツサンドを提供されていますが、原価にしてはお値段が高いものもあります。各店の経営方針もあると思いますが、結局売れなくなれば値下げをするなど長く続かないと思うんですね。皆さん賢く情報を仕入れられるので、やっぱりお客様に正直に商売したいです。
──日替わり惣菜の仕掛けについて教えてください。
「具だくさん麺フェス」と銘打った、日替わり惣菜コーナー
尾張旭店では、惣菜は不定期の日替わりで、毎週末に1週間分のラインナップをインスタグラムで告知しています。惣菜って、何十年前からとんかつ、唐揚げ、コロッケなど定番は変わっていなくて、保守的な世界なんです。買い物に行ってもいつも同じものが並んでいてつまらないと、お客さんも思っているはず。
私は2019年から稲沢の本店でインスタグラムを始めましたが、最初はレパートリーが少なくて投稿するうちに「また同じものを食べさせるのか」と罪悪感を感じました。そこで日々、新商品を試作するようになり、スムージーは季節限定も含めて20種類ほど、具だくさんおにぎりは14種類に増えました。その中で売れるもの、売れないものがあり、学びがあります。
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──今後の目標は。
いまはインスタグラムで広がりを感じていますが、おいしさにとことんこだわっているからこそ、リピーターが増えていくのだと思います。今までと変わらず、もっとおいしく、心を込めて新しい惣菜づくりにチャレンジし続けていきたいです。
みかん「せとか」、マンゴー、梨のスムージー。太田さんは新商品を生み出し続けていく