投資や開発とはあまり縁のない(と思いたい)東京の東側のエリア、谷中・根津・千駄木の頭文字をとり「谷根千」と呼ぶ。その広さは約2キロ四方。すべて歩いて回れるような小さなエリアだが、これが私にとって奇跡のような町なのだ。
まず、タワマンなどのビルが少ない。そして、第二次世界大戦の空襲を奇跡的に免れている箇所があるため、古い木造建築が残っている。さらに、大規模商業施設もないため、チェーン店が少なく、個性豊かな個人商店主による小さなお店が並んでいる。
これが郊外にあるなら珍しくないかもしれないが、ここは山手線の内側。東京駅や銀座からタクシーでも2000円ほどのロケーションにあるのだ。
江戸時代から寺町である谷中、戦前までは遊郭もあった門前町である根津、森鷗外や夏目漱石も住んでいた文人の町、千駄木と、それぞれの町のカラーも明瞭で、東京の西側の住宅街で生まれ育った私からすれば、歩くだけで日々刺激をもらい、発見のあるエリアだ。
この「谷根千」にほど近い町に住み、約15年が過ぎたが、犬の散歩や日々の買い物をいまだに半ば観光客のような目線で楽しんでいる。
この「奇跡のような町」をもっと知ってもらいたい。そんな気持ちで始めたのが地域メディア『rojiroji magazine』だ。アマゾン勤務時代に知り合い、結婚したパートナーとふたりで分業し、SNSやブログでの発信、マガジンの発行、ときにはイベントを開催。勝手ながら谷中・根津・千駄木の魅力をお伝えせんと、ときに深刻な夫婦喧嘩に発展しながらも細々と続けているプロジェクトだ。
『rojiroji magazine Vol.05』は現在、谷中・根津・千駄木の19店舗で販売中。300円。
この5月に発行した『rojiroji magazine Vol.05』では「谷中・根津・千駄木 meets モード」と題し、ファッションやライフスタイルに関わる新しい風を吹き込んでくれるようなニューオープン店を中心に紹介した。
「谷根千とファッション⁉」と意外に思われがちだが、どっこい、トレンドの最先端をいくハイブランドを扱うセレクトショップや、1杯1500円するようなシングルオリジンコーヒーに都内から多くの愛好家が集まるコーヒースタンド、藝大出身者によるジュエリーのアトリエ兼ショップなど、高感度でユニークなお店が点在する(ひしめく、とは言えない)のがこの辺りの面白さなのである。