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2021.06.28

韓国の送金アプリ「Toss」を生んだ起業家が資産10億ドル突破

Getty Images

創業8年の韓国のフィンテック企業「ビバ・リパブリカ(Viva Republica)」の創業者兼CEOであるイ・スンガン(英語名SG Lee)は、同族経営の財閥が経済を支配してきた韓国において、自力で富豪になる人が増えていることを示す最新の人物だ。

送金アプリ「Toss」を運営するビバ・リパブリカは6月23日、最新の資金調達ラウンドにおいて、評価額74億ドル(約8200億円)で4億1000万ドルを調達したことを発表した。今回のラウンドの出資元にはニューヨークのAlkeon Capital ManagementとシリコンバレーのAltos Venturesが名を連ねている。同社はこれまで、ペイパルやシンガポールの政府系ファンドGIC、ベンチャーキャピタルのクライナー・パーキンスなどから資金を調達してきた。

Tossの広報担当者は、この調達によりイが保有するViva Republicaの株式の価値が10億ドルを突破したことを認めた。フォーブスは、同社の18%弱を所有するイの保有資産を12億ドルと試算している(非上場企業の株式の価値は、一定のディスカウントを加えて算定する)。

ソウルの江南に拠点を置くビバ・リパブリカは、2013年に設立され、その2年後に送金サービスのTossを立ち上げた。以来、Tossは、ローンの提供、クレジットスコアのチェック、株式投資などにサービスを拡大してきた。

Tossは、韓国の人口の3分の1以上に相当する2000万人のユーザーを抱えている。ビバ・リパブリカの2020年の売上高は、前年の3倍以上の3900億ウォン(約365億円)に上昇し、損失額は前年の1150億ウォンから725億ウォンに縮小した。

名門のソウル大学を卒業したリは、ビバ・リパブリカを創業する前にサムスン財閥系の病院で歯科医をしていた。Tossのアイデアは、モバイルでの送金に不満を感じたところから始まった。

「Tossは金融のあるべき姿だ。私たちは、モバイルにおける金融サービスのエクスペリエンスを再設計し、韓国のすべてのモバイルユーザーに提供したい」と彼は2017年のフォーブスの取材に述べていた。

リは、ここ最近、韓国で増加中の自身で起業したビリオネアの仲間入りを果たした。Eコマース企業クーパン(Coupang)創業者のボム・キムや、BTSの所属事務所の創業者のパン・シヒョク、人気ゲームPUBGで知られるゲーム会社クラフトン会長のチャン・ビョンギュなどが、ここ数年でビリオネアになっている。

フォーブスは2005年から毎年、韓国の富豪ランキングを発表しているが、今年は初めて叩き上げの富豪である「セルトリオン・ヘルスケア」共同創業者のソ・ジョンジンが1位に立った。これまで、韓国の富豪ランキングでは、サムスンや現代などの大手財閥の後継者らが常に1位に立っていた。

編集=上田裕資

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