17歳でうつ病に メンタルヘルスのSNSで共感される、NY大生の原点

blossom the project代表 中川ホフマン愛=ニューヨークで撮影


──「blossom the project」のフォロワーはどんな人が多い?

インスタのデータ上では、18~34歳の人が半数近くを占めています。人生のなかでいろいろな変化を感じる時期で、メンタルヘルスに目を向ける年代なのではないでしょうか。ちなみに現状は約8割が女性のフォロワーですが、男性の方々にも見てもらいたいです。もともと投稿は淡いピンク色ベースで、女性らしいイメージを連想する人もいるので、最近は青色ベースに変えています。

──ことし1月には社会問題やアート作品を扱うウェブマガジン「blossom the media」を始めました。なぜやろうと思ったのですか。

インスタで載せられる情報はとても限られていて、足りないと思ったからです。これが全てだと思ってほしくないと感じました。

インスタのフォロワーを生かして、さらに問題を伝えたいのでメンタルヘルス、人種差別、フェミニズム、ジェンダーなどへの思いを形にした作品(記事、詩、エッセイ、アートなど)を募集する形式にしました。また、運営メンバーにはデザイナーなどもいるので、もっとみんなの個性を生かせるメディアにしたいと思い、この場をつくりました。

blossom the projectは4人で運営していて、私が全体的にイラストなども担当しています。メディア運営の方は、イギリス、ブラジル、中国、フィリピン、日本など世界から12人の有志メンバーがいます。基本的に日本にルーツがある人が多いですが、日本語が全く話せないけれど日本のカルチャーに興味がある人も。実は、インスタを通じてチームメンバーを募集した時に、1週間で150人も応募してくれて驚きました。

大阪なおみ選手
全仏オープンの棄権とうつ病を告白した大坂なおみ選手 (Getty Images)

──大坂なおみ選手のうつ病告白によって、アスリートのメンタルヘルスが注目されました。愛さんが思うことは?

日本だけでなく世界的にお金持ちや有名人であると、責任論が問われやすいと思います。メンタルヘルスの問題は人間誰でも起こり得ることなのに「社会的地位があるから、悩みはないんじゃないの」などと、勝手に思ってはいけない。周りからは、人がどういう悩みを抱えているのか見えづらい。だからこそ話し合える場が必要だと考えます。大坂なおみさんの行動はものすごく勇気のあること。

私自身がうつ病と診断された時や家族が亡くなった時、周りに話せませんでした。インパクトのある人が自ら話すことによって、メンタルヘルスの問題を知ったり、話したりするきっかけになるので素晴らしいと思います。

ひとりの人間として休むことは必要。特に日本社会では我慢が美しいとされたり、いい就職先に就くべきなどプレッシャーが根強いので「もっと自分に優しく、正直に生きていいんだよ」となってほしい。

──「メンタルヘルスx社会問題」について、ビジネスパーソンの読者に伝えたいことは。

ことし4月、日本のある企業で職場のメンタルヘルスについてトークセッションをしました。不調の時は自分の意見や感情を押さえ込まず、上司やチームメンバーに対して「今は難しい」や「○○と一緒にやってもいいですか」と発言する勇気を持ってもらえたらと思います。周りの助けや支えを求めることは恥ずかしいことではありません。

過度なプレッシャーを感じながら働きすぎると、ガソリン切れの車と同じように走れなくなってしまう。その前に自分の感情と向き合うことが大切です。特に男性のメンタルヘルスに対しては偏見が強いと感じています。職場でもカジュアルに「最近、調子どう?」と話せる環境があると良いと思います。メンタルヘルスについて話すことは、弱さの象徴ではありません。

中川ホフマン愛

中川ホフマン愛とインフルエンサーたちがメンタルヘルスについて語り合う連載「Talk about Mental Health」は月1回展開していく。第一回目のゲストは、kemio。(記事はこちら

文=督あかり 写真= アマリ・ウェデル

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