「捨てるの? とんでもない!」 オランダ発リペアカフェが世界に広がる理由

捨てるの? とんでもない!(Shutterstock)


地域コミュニティ形成にも オランダ発の「リペアカフェ」


利用者のこうした気持ちに寄り添い、修理のための技術を共有するコミュニティがある。

オランダ発祥のリペアカフェだ。

リペアカフェは、地域の公共スペースや空き店舗などを活用して、「捨てるの? とんでもない!」をモットーに、物の修理のために地域住民らを結ぶリアルなコミュニティである。

「作る・使う・捨てる」という常識に疑問をもったオランダ在住の環境ジャーナリスト、マーティン・ポストマ氏が、製品を廃棄しない文化をつくるために始めた。2009年にアムステルダムで世界で初めてのリペアカフェをオープンしてから、現在はオランダ国内では476軒、世界でみれば35の国と地域で2000以上のコミュニティにまで広がっている。


Repair Cafe “Building Resilience”

リペアカフェは月一回開催され、電化製品、衣類、家具、おもちゃ、自転車など修理したい製品を持ち込むと、直す知識や技術、道具を持った地域住民が無償で修理を施してくれる。それだけではなく、修理に関する勉強会なども行う。地域のなかでリペアカフェを始めたいと思った人たちが自発的に始める仕組みも特徴だ。

2018年からは世界中のリペアカフェのボランティアらの知識をデータベースに集積し共有できるようにしたり、現在までに3Dスキャナーや3Dプリンターを活用した修理を進める拠点も誕生したりしている。

リペアカフェの素晴らしいところはいくつもあるが、特筆すべきは次の点ではないだろうか。

リペアカフェで壊れた物をどうやって直せるか考えることで、メンタリティが変わる。さらに、修理を起点に住民たちの間にコミュニケーションが生まれ、「共に使い続ける」コミュニティが形成される。加えて、これまで社会であまり注目されてこなかった、修理のノウハウを持つ高齢者や技術をもつ人たちが貢献できる場が生まれる。

修理という軸で人々が出会う場を創り出すことは、こんなにも多くの恩恵をもたらしてくれるのだ。

オランダ
Image via Repair Cafe Facebook page

これまでサーキュラーエコノミーのビジネスモデルや生産の方法について多く語られてきた一方で、利用者が長く使い続けるための文化醸成についてはあまり議論されてこなかった。しかしサーキュラーエコノミーを実現するためには、利用者が大きな役割を担う修理などの工程をどのように文化として根付かせることができるのかを理解し、実践していく必要がある。

【参考】リペアカフェホームページ
【参考】Repair Cafe Facebook page
【参考論文】Repair motivation and barriers model: Investigating user perspectives related to product repair towards a circular economy


(この記事は、2021年3月にリリースされたCircular Economy Hubの記事から転載したものです)

連載:国内外のサーキュラーエコノミー最新動向
過去記事はこちら>>

文=西崎こずえ

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