ビジネス

2021.06.27 17:00

「モンスト」とコミュニケーションの可能性

木村弘毅 ミクシィ代表取締役社長

若き日に知った「mixi」に衝撃を受け、20代後半で転職した木村弘毅。「サンシャイン牧場」や「モンスターストライク」で成功を収め、現在は社長を務める彼の日常と原点について聞いた。


「心地よいつながり」を軸としたソーシャル・ネットワーキング サービス「mixi(ミクシィ)」は、2004年2月に提供を開始しました。当時はまだインターネット上で誰もが身近な人と気軽にコミュニケーションする文化はなく、「日記」や「コミュニティ」など、つながった人たちと楽しくコミュニケーションできる機能が人気となり、多くの方に愛されるSNSとなりました。

僕がそんなミクシィを知ったのは、28歳のときです。それまで匿名が普通だったインターネットの世界に、友人や知人といった近しい人とコミュニケーションする場ができ、大勢の人がやりとりし始めたのはものすごく大きな衝撃でした。もともとゲームやスポーツが好きだったのですが、そのいちばんの理由も「友人と一緒に楽しめるツールであること」。つまり、ゲームやスポーツのもつ「人のコミュニケーションを生み出す力」にこそ興味・関心があり、就職先も自ずとコミュニケーションというキーワードを重視していました。

2008年、32歳でミクシィに転職。「mixiゲーム」内で展開するコンテンツの契約や運用コンサルティングを担当し、手がけたひとつの「サンシャイン牧場」は大ヒットとなりました。その後、新たなコミュニケーションサービスの新規プロジェクトを立ち上げるも、大きな失敗を経験。それでも、コミュニケーションをサービスポリシーや価値において発展してきたミクシィで、その可能性をどこまでも追求してみようと腹をくくり、2013年10月に身近な人と集まってワイワイ遊べる「モンスターストライク」をリリース。狙いどおり、多くのユーザーが友人や家族と楽しくプレイしている姿を見たときは、とても嬉しかったです。

最近、ハマっているスポーツはビーチバレーです。昨年、右肩が四十肩となり、ビーチバレー選手の西村晃一さんのボディメンテナンスのトレーナーを紹介されました。体幹トレーニングのため、砂が敷き詰められた小さなビーチでの反復横跳びから始まり、「反復横跳びを楽しむためにはボールを1回受けたほうがいいですよ」と言われて、いまはレシープを受けたりサーブを打ったりするように(笑)。たった週一回のトレーニングでも普段の自分のパフォーマンスが上がっていることを実感できています。

祖父も父も社長でした。祖父はトヨタ系列の工作機器メーカーの社長で、父は銀行員を脱サラし、電気設備系の会社を起業しました。そんなわけで経営論やノウハウ、教訓などは、子どものころから家庭内で見聞きして育ってきたと思います。小学3年生から銀行のキャッシュカードを渡され、お小遣いは振り込み制でしたしね(笑)。一方、僕は絵画や彫刻、あるいは化学の実験をしたりするのが好きな子どもで、祖父や父にはコンプレックスを抱き、クリエイティビティが発揮できる趣味や仕事がいいとずっと思っていました。経営者志向というよりクリエイター志向の方が強かった。しかし、いざ社長をやってみると、ビジネスや経営にこそクリエイティビティが求められることを実感。「経営者としてもクリエイターとしてものづくりに携わっていたい」という思いが叶って、とても充実した日々を送っています。
次ページ > 木村弘毅のある1日

構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

連載

CEO’S LIFE─発想力の源を探る

ForbesBrandVoice

人気記事