今回の買収は、カード決済以外の分野に進出すようとするVisaの2度目の試みとなる。Visaは、サンフランシスコを拠点とするオープンバンキングの新興企業Plaidを買収しようとしたが、失敗に終わっていた。
2012年に設立されたストックホルム本拠のTinkは、設立当初は個人の財務管理アプリに注力していたが、現在では欧州の約300の銀行やフィンテック企業が顧客の財務データを集約しプロダクトを構築することを支援している。
「Tinkとの取り組みで、当社は英国およびEUの市民の利益のために、オープンバンキングの革新を加速させていく。さらに、欧州におけるテック人材向けの投資を継続させる」と、Visa EuropeのCEOであるシャーロット・ホッグは声明で述べた。
ただし、VisaとTinkの取引は、規制当局の承認を受ける必要がある。VisaはPlaidを53億ドルで買収しようとしたが、米国司法省が反トラスト法違反の訴訟を起こしたために中止していた。
司法省の反トラスト規制当局は、この買収が競争を低下させ、「米国の加盟店と消費者からVisaに代わる革新的なサービスを奪い、将来の革新的な企業の参入障壁を高める」と主張していた。
今回のTinkとの取引も、欧州の独禁法監視当局に同様の懸念を抱かせる可能性があると、金融テクノロジーコンサルタント会社「11:FS」は述べている。
「Visaが、この買収によって、中核となる決済分野での競争を防ごうとしているのではないかという懸念も生じる。また、カウント・トゥ・アカウントの決済は、消費者や企業にとってカード決済よりも低コストになる可能性があるが、その結果、Visaの売上は減ることになる」と、11:FSのSimon Taylorは指摘した。
Visaは、Tinkは欧州の440社のオープンバンキング企業の1つに過ぎず、欧州の規制環境は米国とは大きく異なると述べている。Tinkをはじめとする欧州のフィンテック企業の多くは近年、欧州連合が金融分野の競争力を高めるため、銀行に顧客の財務データの外部企業との共有を義務付けたことから生まれている。