サードパーティーは競合ではなく「顧客」
もうひとつ強調しておく。多くのコンサルタントが無謀だと言うような幅広い事業への投資を実践する場合には、「誕生したばかりの事業」を守ることだ。新規の事業を潰そうとするのはとかく、企業本体そのものだからだ。
ジェフ・ベゾスはその点で長けていたと思う。彼はアンディとAWSを、スティーブとデーブ・リンプとデバイス事業を細心の注意を払って守り抜いた。アンディやスティーブやデーブはそんなふうに感じていなかったかもしれないが──。
サードパーティー(第三者企業)として設立したストアでは、アマゾンの小売りチームと他の小売業者が同時に営業できるようにしたが、ジェフはそれを徹底して守った。
小売り事業部門が第三者企業と競合しないようにする唯一の方策は、そういった企業の出店者を「最初から顧客として扱う」ことだ。ジェフはそれを見事にやってのけた。
初面談の前日、CEOラリー・ボスからかかってきた電話
わたしの師である、18世紀ベルギーの医師であり慈善家だったアンドレ・トランパーはこう言っていた。「自分の特性を包み隠してはいけない。すべてをさらけ出す勇気があれば、人と本物のつながりを築くことができる」。まずはそこからスタートするといい。
誰かが失敗したとき、自分は、問題と失敗した人とを分けて考える人間であることを知らせる。
誰かが失敗して成功から遠のきそうなときは、彼を別方向に導く。誰かが自分ではどうにもできない問題のせいで失敗しそうなときは、一緒になってその問題を取り除こうとする姿を、彼に示す。
多くの場合、それは相手をさらに高い水準まで引き上げ、失敗したときには手助けをしあう関係を築くのに役立つ。
いい例がある。わたしが最初に担当した事業で、CEOのラリー・ボスと初めて四半期ごとの面談をしたときだった。
わたしは緊張していた。事業はそれなりの成績を収めていたが、絶好調というわけではなかったからだ。
アシスタントがオフィスに来て、すこし取り乱した様子で言った。「ジェフ、ラリーから電話です。出てください」。電話に出るとラリーが言った。「ジェフ、ラリーだ」。「ラリー、どうかしましたか?」とわたしは答えた。
彼はこう続けた。「明日は面談の予定だ。化学事業全般について確認するつもりだ。君にとっては大変な1日になるだろう。帳簿はもう確認した。君のやり方は尊重する。君は優れたリーダーになれると思うし、素晴らしい経歴を積んでいくと思う。その点はわかっていてほしい。だが、明日はとても大変な日になる」
その日、わたしは眠れなかった。心配しすぎていた。面談は無事に終わったが、もっと話し合いたかった。
ラリーは高い目標を設定し、「相手を気にかけている」と思わせるのがうまかった。
彼は期待に応えられない相手を怯えさせるのもうまかった。ただしたとえ相手が失敗して、そのときは叱りつけたとしても、いつももう一度チャンスを与えた。