ビジネス

2021.07.02 08:00

アマゾンCEOが「師」と慕った男、ジェフ・ウィルクの教え


時ともに「価値を付加」していく、その態度こそが創造的


発明につながる方法はたくさんあり、どれもそれほど複雑ではない。困難なのは、何年もかけて発明に取り組み続けることだ。

何か新しいものを生み出すことはたしかに重要だ。しかし、せっかく本を読み、ポッドキャストを聞き、名案がひらめいて何かを生み出したのに、すぐに次の何かに関心を移してしまうCEOが多すぎる。「名案」から生み出したものをその後何年も放置したまま。「数年前の思いつきは今でも当時と同じように価値を生み続けているか?」と問うCEOはほとんどいない。

創造的な作業が困難なのは、創造したものに、時の経過につれて価値を付加していかなければならない点だ。でなければ、かつては創造性に満ちていたのに「重荷」になってしまったものが、会社内にごまんと積み重なる残念な結果にしかならない。

そうした重荷を背負いこまず、創造性をひろくおしのべていくために、実に慎重に体制を組織しなければいけない。


元アマゾンコンシューマー部門トップ、ジェフ・ウィルク(Getty Images)

「シングルスレッド」のリーダーシップで成功


誰かに新しい役割を与えるときは、できる限りその役割に専念させるのがアマゾンの考え方だ。だからAWSが始動したときも、ジェフはアンディ・ジェシーをAWSの専任とし、アンディはそれ以外の仕事には一切かかわらなかった。

デバイス事業を始めたときは、それまで書籍事業を任されていたスティーブ・ケッセルを異動させて責任者とし、そのほかの役割を持たせなかった。彼は全社で最大の事業を担う責任者から一転して、アシスタントがひとりいるだけの、新しく生まれたばかりの事業だけを任されることになった。

何より重要なのは、この「シングルスレッド(専任体制)」のリーダーシップだった。次に重要なのは、リーダーに、担当分野ソフトウェアアーキテクチャを熟知させることだ。

今でこそクラウドサービスのおかげで容易になったが、当時はアーキテクチャに難があると事業の伸長が鈍化する恐れがあった。もっとよくないのは、十分に気をつけていないと、運営がうまくいっていないせいで優れたアーキテクチャを実現できないことだ。

われわれは従来の古典的なアーキテクチャから脱却し、サービスを中心に据えたアーキテクチャをつくるために、多くの課題に取り組んだ。アマゾンの歴史の中盤頃に直面したこの問題が、経営陣にとって最大の難関だったかもしれない。

われわれはあらゆるものを測定し、アウトプットではなくインプットを重視する。そのため、四半期ごとの利益にはほぼ拘泥しなかった。

インプットに集中すれば、事業部門ごとのアウトプットをめぐるチーム間の競争を気にしなくてすむ。
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翻訳・編集=北綾子/S.K.Y.パブリッシング、石井節子

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