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広告キャンペーンに起用されたLGBTQIA+の活動家のミーガン・ラピノー(Getty Images)

ランジェリーの大手ブランド、ヴィクトリアズ・シークレット(VS)は遅ればせながら、旧態依然とした企業文化の改革に乗り出した。同社もようやく、時代は変わりつつあり、自社製品を売るために女性をモノ扱いすることがもはや効果的な戦略ではないことを悟ったようだ。

自社コレクションのブランド再構築にあたって同社は、各界で成功を収め、高い評価を得ている女性たちの力を借りることにした。この路線変更は、VSを救うだけでなく、新たな広告キャンペーンが女性消費者の自己イメージの改善につながる可能性も高い。

旧来のVSによる広告キャンペーンは、細身のモデルたちがハイヒールを履き、巨大な「エンジェル」の翼をまとった姿で登場するもので、男性消費者にアピールすることを目的としていた。だが同社は最近になって、こうした広告が、ランジェリーの主な購入層である女性を疎外していることを自覚するに至った。


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「男性の求めるものを表現するブランドから脱却し、女性のニーズを体現する必要があった」と、同社のマーティン・ウォーターズ最高経営責任者(CEO)はニューヨーク・タイムズの取材に対して述べている。

装いを一新した広告キャンペーン「VSコレクティブ」は、外見ではなく、自らつかみ取った成果によってその名を知られる女性たちをフィーチャーしている。

このキャンペーンの参加メンバーには、女性アスリートにも男性と同額の報酬を求めて戦うサッカー界のスター選手で、LGBTQIA+の活動家でもあるミーガン・ラピノーや、米国人の父と中国人の母のあいだに生まれ、北京冬季五輪に中国選手として出場することが確実視されている17歳のフリースタイル・スキー選手、かつモデルとしても活躍するアイリーン・グーが参加。

ほかにも、インド出身の俳優・プロデューサー・作家として活躍するプリヤンカー・チョープラー・ジョナス、プラスサイズ・モデルのパロマ・エルセッサーらが名を連ねる。エルセッサの起用は、VSがより大きめのサイズ展開を考えるきっかけになる可能性を秘めている。

新キャンペーンの目的はブランドの再構築だが、同ブランドの成功や失敗をはるかに超えた大きな影響を及ぼす可能性が高い。最近は不振を極めていたものの、同ブランドはいまだに大きなリーチを有している。800店舗以上の小売拠点と、オンラインでの大きなプレゼンス、そして広範なブランド認知を擁する同社は、「セクシー」の定義を塗り替えるのに一役買う可能性を持つ。

エルセッサはニューヨーク・タイムズの記事の中で、VSの新キャンペーンに参加する決断を後押しした要因として、同ブランドが持つ、大きな変化を呼び起こす可能性を挙げている。決断の裏には「状況の冷静な分析があった」とエルセッサは語っている。

「私がモデル業を始めたのは、おしゃれに装うためだけではない。世界を変えるためだ」と彼女は語る。「VSのようなプラットフォームを通じて、あらゆる人のリビングに入り込むことができる。画期的な変化を起こせるのは、そうした場所からだ」

以前のVSの広告が伝えるメッセージは、魅力に欠けるだけでなく、悪影響を及ぼしていた。こうした広告に登場する細身のモデルたちの写真を目にした後は、女性の自己評価が下がることが、数々の研究で繰り返し示されている。こうした広告を見た若い女性たちは、自分の体に対して劣等感を抱くだけでなく、気分の落ち込みや、体重に関する不安の増大といった問題に見舞われたと報告されている。

一方で、成功した女性の話題に触れた場合には真逆の効果が生まれる。女性たちは、その存在に勇気付けられるのだ。VSの新キャンペーンに登場するような並外れた成果を収めた女性たちは、「ジェンダーの障壁を克服し、成功をつかむことは可能だ」ということを身をもって示している。彼女たちは、あらゆる体が美しいことを証明し、女性たちに力を与える存在なのだ。

今回の企業文化の刷新と、新たな広告キャンペーンの展開からさかのぼること2年ほど前、VSを率いる男性たちは、女性をモノ扱いする、女性差別的な企業文化を主導したとして批判の渦中にあった。同社上層部はモデルたちにセクシャルハラスメントを行い、広告キャンペーンに多様な体型の女性を起用することに何の関心も持っていないと報じられた。


2018年に開催されたランウェイショー(Getty Images)

そして、女性に対するこうした時代遅れの見方が、株価の暴落や、数百にのぼる小売店舗の閉鎖、そして、毎年恒例でテレビ中継されていたランウェイショーの中止を招いた。

それ以来、VSは経営陣を刷新した。同社はすでに新たなCEOを迎えており、2021年夏には、ボディケア用品などを扱う系列企業のバス&ボディワークスと共に、親会社のLブランズからスピンオフし、それぞれが独立した公開会社となる。その後、取締役会のメンバーも一新される予定だ。

ヴィクトリアズ・シークレットは今後、これまでの広告キャンペーンに疎外感を抱いていた女性たちの心を再びつかむことができるのだろうか。それはふたを開けてみるまでわからない。それでも、少なくとも、同社の現在の施策が、外見以外のところで評価されたいと考える女性たちの興味関心と一致しているのは確かだ。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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