鈴木:フランス留学時代、どのようなことを学ばれたのですか?
河野:主に語学とツーリズムです。大学在学中に短期留学したフランスで世界一の観光大国の現状を目の当たりにして、もっと長期間現地で学びたいと思い、卒業後、フランス・アンジェに留学しました。留学中にフランスやヨーロッパ諸国を周遊し、観光大国の実情を肌身で体験できたことは今も大きな財産です。
フランス留学中に訪問したモナコにて
フランス人のライフスタイルに感銘
鈴木:フランス留学で一番印象に残っていることは何ですか?
河野:フランスのツーリズム、フランス人のライフスタイルに触れ、それまでの概念が大きく揺さぶられました。よく「フランス人はバカンスのために働く」と言われますが、一人ひとりが人生を謳歌している様が印象的でした。バカンスといっても決してお金を掛けた派手なものではなく、各人の身丈にあったライフスタイルの延長にあるバカンスです。
例えば、オープンカフェで友人とお茶をしながらゆっくり語り合ったり、休日は家族や仲間と公園でピクニックしたり、日曜大工をしたり。どこかにバカンスにでかけなくても、日常の中に個々人が生活を楽しむゆとりを持っています。
そしてもう一つ印象的だったのが、地方の小さな街でもツーリズムが浸透していることです。地方独自の文化風土が残っていて、住民はそれを誇りに持ち、それぞれのライフスタイルを謳歌している。そしてそのライフスタイルそのものが観光資源になっているんです。“非日常”体験ではなく“異日常”体験のツーリズム。そんな成熟したツーリズムが根付いていると感じました。
鈴木:フランス留学後、旅行業を経て軽井沢でオーベルジュの運営に7年も携われたとの事ですが、そこから見えた軽井沢のライススタイルはいかがですか?
河野:軽井沢に移住したひとつのきっかけはフランスの地方都市に似たものを感じたところです。日本有数の観光地ですが、歴史的な避暑地としてのライフスタイルがあります。軽井沢と聞いて真っ先に思い浮かべるのは「避暑地/別荘地」ではないでしょうか? 軽井沢のライフスタイルそのものがブランドであり、それが観光資源にもなっている国内でも稀有な町だと思います。
軽井沢の観光戦略のポイントは滞在型リゾート
鈴木:軽井沢の現在の観光の実態から見える将来の観光戦略についていかがお考えでしょうか?
河野:軽井沢に移住してから来訪者と接するうちに、本来の滞在型リゾートではなく、日帰り観光地のイメージが強くなってきている印象を受けました。年間870万人も訪れる観光客の大多数が、軽井沢の真の魅力を体感しないまま、さっと通り過ぎてしまう。