WHO、南アにワクチンの技術移転拠点を開設へ 1年以内に現地製造も

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世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症ワクチンの一つ、「mRNAワクチン」の技術移転のための拠点を南アフリカに設けると発表した。このタイプのワクチンを製造しているメーカーなどの協力を得て、1年以内に現地で製造を始めることをめざす。

WHOのチーフサイエンティスト、ソミヤ・スワミナサンによると、ワクチンメーカー側とはまだ合意に至っていないものの、このタイプのワクチンをすでに製造している米ファイザーとドイツのビオンテック連合、米モデルナのほか、ワクチンを開発中のより規模の小さい複数の企業と交渉に入っているという。

スワミナサンは、実証済みのワクチンであれば、この拠点で「9カ月から1年以内」に製造を始められそうだとの見通しを示した。ただ、開発中のワクチンの場合はそれより時間がかかるとみられるという。

南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領はこの拠点について、「アフリカ大陸全体に確実に恩恵がおよぶようにする」と述べたが、具体的にどのように他国とワクチンを共有するかについては言及しなかった。

AFP通信によると、南アフリカの新型コロナワクチン接種率は1%にとどまっている。一方で、アフリカ全体の感染者の3割超が南アフリカに集中しており、ラマポーザは現在見舞われている感染拡大の第3波は「これまでのものより厳しそうだ」と警戒感を示している。

南アフリカやインドは世界貿易機関(WTO)で、ファイザーやモデルナなどが開発した新型コロナワクチンを途上国で製造できるように、知的財産権を保護する規定の適用除外にするよう求めてきた。

だが、米国や英国などワクチンメーカーを擁する国の反対で、これまで実現は阻まれてきた。ジョー・バイデン米大統領は5月、特許放棄を支持する考えを示したものの、米国がどの程度まで放棄を認めるのかや、ほかの先進国も同意するのかは不透明だ。

主要7カ国(G7)は今月の首脳会議で、途上国などにワクチンを10億回分提供することで合意している。

編集=江戸伸禎

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