米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)のデータによると、2020年に交通事故によって亡くなった人の数は、速報値の時点で3万8680人に達している。これは、2019年の死者数3万6096人と比較して7.2%増となる数字だ。
一方で、全米の自動車の総走行距離を推計した車両総走行マイル(VMT)は、前年から約4302億マイル(約6923億km)減少している。これは、前年比で13.2%のマイナスにあたる大幅な減少だ。
これらの数字から導き出される「総走行距離1億マイルあたりの死者数」は、2020年は1.37で、2019年の1.11から上昇した。四半期ごとの前年同期比で見ると、2020年は、特に第3、第4四半期に死者の増加が著しかった。
死者数は、大半のカテゴリーで増えている。乗用車に乗っていて亡くなった人の数は2万3395人に増加した。歩行者の死者数は6236人とほぼ横ばいだった一方で、オートバイ事故の死者は前年比で9%増の5458人に達した。
こうした警戒すべき増加傾向が生じている要因について、NHTSAでは、酒や薬物により正常な判断ができない状態での運転や、スピードの出し過ぎ、シートベルトの着用義務違反を挙げている。
NHTSAのデータにおいて、交通事故に関して特に増加が目立つのがシートベルト非着用だ。乗員が車外に投げ出されたケースは、2019年と比較して20%増、乗用車でシートベルトなどの拘束(保護)装置を装着していなかった乗員の死亡事故も15%増えているという。
このように、2020年のデータについては憂慮すべき傾向が大半を占めたが、大型トラックが絡む衝突事故の減少や、65歳以上の高齢者の交通事故死者数がマイナス9%と大きく減少するなど、明るいニュースもいくつかあった。
米国における年間の交通事故死者数、および、走行距離1億マイルあたりの死者数の推移*
*2020年のデータは速報値。確定値では修正される可能性がある。