I study technology disruption in individuals, companies and societies.

Photo by Gabe Ginsberg/Getty Images for LARAS

2006年に創業し、遺伝子検査キット業界の先駆者となった米企業23andMeが今月17日、リチャード・ブランソンが設立したSPAC(特別目的買収会社)との合併を通じて上場した。同社株は上場初日に20%上昇し、遺伝子解析のポテンシャルに対する市場の関心の高さを示した。

23andMeは遺伝子検査キットの開発・改良と低価格化に多額の投資を行い、15年前から一般向けの唾液検査キットを99ドル(約1万円)ほどの価格で提供してきた。これにより、遺伝子マーカーとなる一塩基多型(SNP)96万人分を集めた膨大なデータベースを構築し、多くの個人的特徴についての知見を手にしている。

筆者が初めて同社の遺伝子検査を受けた時、その結果には特定の疾患の発症確率も含まれていた。だが米国食品医薬品局(FDA)は、個人がこうした遺伝子検査結果に基づき、医学的見地からは必ずしも必要とはされない判断を下してしまうこと(有名な例では、女優アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査の結果に基づき乳房切除手術を受けたことがある)を懸念し、同社が疾患の発症確率に関するデータを提供することを禁止。同社が提供できるのは利用者のルーツに関する情報のみに限られた。

このFDAの決定は即座に反発を呼び、一般人は遺伝子情報に基づいて決定を下す能力がないという理由から、人々の遺伝子情報を得る権利を否定するものだとの批判が上がった。後に、23andMeによる診断結果に対する疑念には正当な根拠がなかったことが明らかになった。

その瞬間から23andMeは、遺伝子情報の宝庫となると同時に、利用者からの大きな信頼も勝ち取る企業への道を歩み始めた。利用者の8割は、製薬会社などの医療企業に自分の情報を匿名で提供することを許可し、さらには自身の健康状態に関する同社のアンケートにも進んで答えている。

実質的な「遺伝子データマイニング企業」となった23andMeは現在、複数の研究契約を締結し、製薬会社から多額の投資を受けている。既に大きかった財源は株式公開によりさらに強化され、同社はこれを医療・治療部門への投資につなげたいとしている。

長年にわたり医療の未来について研究してきた私の見解では、遺伝学はセンサーライゼーション、そしてウエアラブルなどの生理的パラメーター監視端末の利用と並び、最も重要な分野の一つだ。官民を問わず、医療システムの未来は、患者の苦しみを軽減し治療費を低減できる診断予測能力にかかっている。遺伝子関連企業の上場は、当然のことだ。

編集=遠藤宗生

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