ビジネス

2021.06.30

日本のスタートアップは海外勢参入に対して勝てる理由が必要

日本でスタートアップを起業するのが有利なこととして、他国のスタートアップ市場で実績のある起業アイデアを参考に、日本で起業するためのヒントを得られる点があります。個人的には「タイムマシン優位性」などと呼んでいますが、要するに海外で生まれた新しいコンセプトを通して、今後国内でも起こるかもしれない展開が予測できるということです。

このように新しいアイデアを求めて「未来をのぞく」というのは、新たな機会を発見するための良い方法の1つです。

ただし、制限もあります。例えば、それぞれのケースで注意点となるファクターを把握し、考慮しなければ、誤った解釈につながってしまう可能性があります。日本と海外とでは、文化や規制など、様々な点で条件が根本的に異なっていることもあり、同じようなビジネスを展開しようとしても、それらの違いが障壁になってしまうかもしれないのです。

とはいえ、「〜は日本では無理だ」という印象は、結果的に否定されるようなケースがほとんどだと感じています。日本は「ガラパゴス」だからiPhoneは流行らないと、当時は評論家などから言われていました。Facebookのときも、日本人はSNSで個人名を出すことを嫌うから、日本での展開は厳しいと思われていました。同様に、日本人には現金派が多いから、キャッシュレス決済の普及は無理だと言われていました。でも、どの予想も外れたのです。国籍などが違っていても、人間というのは実際のところ、私たちが自覚している以上にお互いに似ているようです。ソリューションは多少違うかもしれませんが、元となるペインポイント自体は共通していることが多いのです。

そのため、新しいコンセプトを検討するとき、私は「このコンセプトは日本でも通用するか」だけではなく、「日本生まれのプレイヤーだからこそ、シェアの大半を獲得できると考えられる強い根拠が存在するか」という点についても考えます。

具体的には、規制や文化、構造的な違いによって、海外プレイヤーが市場に参入しにくい状況かどうかを確認します。例えば、ヘルスケアや金融サービスなどは海外からの参入に対する法規制が厳しく、豊富な資金力を武器に強引な手段も使える大手海外プレイヤーでさえも、容易には日本へ進出できない状況となっています。市場固有の、高い参入障壁が最初から存在するのです。
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文=James Riney

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