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2021.06.25 08:30

ウォルマートが買収のイスラエル発「デジタル試着サービス」 そのすごい機能

外出自粛により、ネットショッピング需要が高まっている(Shutterstock)

外出自粛により、ネットショッピング需要が高まっている(Shutterstock)

拡大を続ける新型コロナウイルス感染症。長引くコロナ禍での外出自粛によって、ネットでショッピングをするようになった人も多いのではないだろうか。総務省のデータによると、2020年4月以降、ネットショッピングを利用する世帯は50%を超え、その後も高止まりが続いている。

こうした状況下で議論されている問題の一つが、商品の返品だ。

これまで店頭で商品を手に取って買い物していた人々がネットショッピングに移行すると、「届いた商品が思っていたものと違う」といった通販特有のトラブルに直面することがある。返品は消費者にとって面倒な作業であり、企業にとっても大きな手間やコストになる。さらに、輸送にかかるエネルギー資源の増加や梱包に必要な資材の廃棄等を考慮すると、サステナビリティの観点からも大きな課題と言えるだろう。

そこで、ネットショッピングにおける返品の発生を阻止しようと、世界最大の小売企業ウォルマートはこの度、オンラインフィッティングプログラムを提供する企業Zeekitの買収を発表した。

Zeekitはイスラエルの女性たちが立ち上げたスタートアップ企業で、AI技術を活用し、ネット上で瞬時に服の着せ替えができる仕組みを提供している。ユーザーが自分の全身を写した写真をアップロードするだけでAIが体型を読み取り、ユーザーが選んだ服を着せ替え人形のように入れ替えてくれる。これによって体型や肌の色、自分の好みに合うかどうかを買う前に試してみることができるというわけだ。



ある調査によると、返品理由の主な理由は「商品が合わない」(86%)と「商品が気に入らない」(68%)ことが大半を占めるという。つまり、消費者が購入前に、その洋服が自分に合って、かつ気に入ると確信できるかが返品を防ぐポイントになるのだ。その点、Zeekitが提供するオンラインフィッテイングプログラムは、自分が買おうと思う服を着た状態を確認できるため、色やデザインが自分に似合うかどうか客観的に判断できそうだ。

オンライン上のフィッティングシステムはすでにいくつかあるが、実際に自分の体を採寸しなければならないものが多い。しかしZeekitのシステムでは、ユーザーは全身写真を撮るだけで良く、採寸の必要がないところが大きな利点だ。

同システムを利用すれば、多様な体型、肌の色のモデルが服を着た場合にどう見えるかを確かめることもできるため、ブランド側としてもインクルーシブなファッションを提案するツールとして役立ちそうだ。

現段階ではウォルマートのウェブサイト上でZeekitのシステムが利用できるわけではないが、いずれシステムが導入される可能性は高く、ユーザーの利便性が高まることが期待されている。事前に自分に合うかどうかをより確信してもらうことで返品を減らすことができれば、環境への負荷を低減できるだけではなく顧客満足度を高めることにもなるだろう。世界的にも大きな影響力を持つ小売店ウォルマートでの実装が楽しみだ。


【参照サイト】Zeekit
【参照サイト】新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング-家計消費状況調査の結果から-|総務省統計局
【参照サイト】ファッションECの返品率を下げる4つの方法


この記事は、2021年6月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
(上記の記事はハーチの「IDEAS FOR GOOD」に掲載された記事を転載したものです)

連載:国内外のサーキュラーエコノミー最新動向
過去記事はこちら>>

文=IDEAS FOR GOOD 編集部

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