・災害などの気象現象によって避難を余儀なくされた気候難民のデータは限られており、「気候変動の忘れられた犠牲者」とも呼ばれている。
・オーストラリアのシンクタンクIEPは、2050年までに少なくとも12億人がこのような気候関連のイベントによって避難する可能性があると予測している。
・国内避難民(Internally Displaced Persons, IDP)の現状に関するデータを含め、気候変動による難民の定義を明確にし、彼らを保護するための国際的なメカニズムを構築することが急務となっている。
地球規模で気候危機が深刻化するのに伴い、自然災害や干ばつなどの気象現象によって、故郷を追われる人々の数が増えている。これらの人々は「気候難民」と呼ばれることもある。そもそも気候難民とはどのような人たちで、国際社会はこの問題にどのように対処するべきなのだろうか。
近年、多くの開発途上国の人々が過去になかったような規模の干ばつや風水害に見舞われ、日々の糧を奪われる事態が相次いでいる。2020年11月、相次いで巨大なハリケーンに襲われた中米のホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの3カ国から、多くの人々が国境を越えてメキシコの米国国境にまで押し寄せたことも記憶に新しい。このように大規模な気象災害が一因となった人々の大規模な移住や国境を越える集団移動が増え「気候難民」との言葉が生まれたのだ。
2021年4月、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、2010年以降、気候変動関連の災害で住居を追われた人の数が2150万人に上るとのデータを発表し「突発的な災害だけでなく、気候変動によって食糧難や水不足が発生、天然資源へのアクセスが難しくなるなど複合的な原因となっている」と指摘した。
気候変動がもたらす海面上昇も大きな脅威である。海面上昇のリスクが高い沿岸域に来る人々の数は過去30年で16億人から26億人に増加、その90%が貧しい開発途上国や小島嶼国の人々だ。バングラデシュは2050年までの海面上昇によって国土の17%が水没し、そこに暮らす2000万人が住居を失うと予測されている。
オーストラリアの国際シンクタンク「経済平和研究所(IEP)」が2020年9月に発表した「生態系脅威レジスター(ETR)」は「2050年までに、少なくとも12億人が居住地を追われる可能性がある」と指摘している。
イメージ: IDMC