コンファレンス・ボード(全米産業審議会)とデータ分析企業のESGAUGEが最近実施した調査によると、CEOが会長を兼務する米国企業は過去3年、徐々に減ってきている。
とくに顕著なのは中小企業だ。時価総額上位3000社を扱うラッセル3000株価指数の構成企業で、CEOが会長を兼務している企業の割合は、2016年の41%から2020年にはわずか36%まで下がった。
コンファレンス・ボードのマテオ・トネロは「取締役会の独立性が重要との認識から、多くの企業が(CEO職と会長職の)分離モデルを採用しています」と説明する。そのうえで「S&P500株価指数に選ばれている非常に大きな企業では、強力なリーダーシップのスキルセットが求められるため、こうした企業は役割の分離に消極的なのかもしれません」との見方を示す。
CEOと会長を担う人を別々にするのは、企業管理の監督を向上することや、ワールドコムやタイコをはじめ、過去に不正をはたらいた企業で起きていたような利益相反を避けることが、主な理由となってきた。
マイクロソフトがナデラの会長兼務について説明した声明の内容からは、取締役会が経営の優先順位をより明確にするよう望んだことがうかがわれる。声明にはこうある。
「ナデラはこの役職(会長職)において、取締役会の議題設定を主導していきます。事業への深い理解をもとに、戦略的な好機を生かし、主要なリスクやその緩和の仕方を見いだして、取締役会にはかることになるでしょう」
CEOの会長兼務という傾向は、米国では2000年のドットコム・バブル崩壊後、いちだんと注目されるようになった。ネット関連のスタートアップが没落するなか、投資家たちが、多くの企業経営者にみられる個人崇拝のような「絶対化」に、疑問を深めるようになったからだ。
タイコやワールドコム、エンロンといった企業の不祥事は、「取締役会はいったい何をしていたのか」という疑問を募らせることになった。こうして、取締役会の会長とCEOの役割を切り分けることは、取締役会の独立性を強化するための重要な一歩と考えられるようになった。