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2021.07.09

「スーパーシティ構想」を持続可能なかたちで実現する視点とアプローチとは 〜「未来を描く力」の高め方 Beyond スマートシティ編

先が見通せない時代。逆説的な話だが、これほどまでに「未来を描く力」が求められたことはない。

いま必要なことは、世界中の人々と手を取り、新しいビジョンを描くこと。そのための戦略を、4つのキーワードから突き詰めていく!

ここでは世界各地で実証実験が進むスマートシティの現在地、さらには日本らしさや地域らしさを追求していくためには何が重要なのか。その目指すべき方向性について語り合う。



デジタルの力を利用して次世代のまちづくりを目指す「スマートシティ」の取り組みが世界各国で活発化している。日本においても、2018年に内閣府がこれまでと次元の違う未来都市を目指す「スーパーシティ構想」を発表し、準備が進められてきた。

その成果をいよいよ社会実装する段階で勃発したのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。テレワークを経験したワーカーの間では、より暮らしやすいまちを求め、郊外や地方都市への移住を図る気運も高まり、まちのあり方を考えるきっかけにもなった。

少子高齢化や過疎化などの社会問題から生じるさまざまな課題を、先進のテクノロジーを活用して解決する目的で取り組みが始まったスマートシティ。今回は、海外のスマートシティの潮流にも詳しい南雲岳彦、スマートシティの基盤となる都市OSの構築と整備に携わり、まちづくりの企画・運営支援にも主体的に関わるNECの小野田勇司、前Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子の3者を迎え、スマートシティの現在進行形の姿と、ポスト・ニューノーマル時代のまちづくりに必要な視点やアプローチの手法を探った。

地域に暮らす人々の幸せとは何かを考える


浜田敬子(以下、浜田):NECはデータ利活用によるまちの課題解決を目指すベンダーとして早期にスマートシティ事業に取り組まれた企業の一社だと思います。NECの目指すスーパーシティの姿とはどのようなものなのですか。 

小野田勇司(以下、小野田):まちというのは時代とともに変化していく生命体のようなものです。それを踏まえたうえで、NECでは、まちづくりの本質というものを「地域らしい」という言葉に込めて表現しています。地域特有課題の解決、経済基盤の活性化、そして、そこに住む人・集まる人のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を実現することで、安全安心で、誰もが豊かさを享受できるまちづくりを実現し、それが持続可能な仕組みづくりを目指しています。



当社がスマートシティ事業を本格始動させたのは2010年初期のこと。少子高齢化、労働人口の減少が進む日本においては、限られた資源で幅広いデータを共有・活用していくことは今後不可欠になると考え、スマートシティの先進地域として知られる欧州の仕組み「FIWARE(ファイウェア)」の開発に11年から参加しました。そして国内導入に向けて品質を独自に検証し、都市経営やビジネスにも活用できるようセキュリティなどを強化したうえで、データ連携基盤(都市OS)として提供を開始したのです。

浜田:実際のまちづくりにおいて、この都市OSはどう機能しているのでしょうか。

小野田:例えば、コンパクトシティを目指す富山市では、LPWAセンサーを居住区域の98%に設置して、そこから取れるリアルデータと行政や民間事業者が保有するデータを連携させ、市民・観光客へのきめ細やかな移動ナビゲーションを実現しています。具体例のひとつとしては、小学生にGPSロガーを持っていただき、個人を特定しないかたちで登下校の動態をとらえ、交通量や工事現場のデータなどと組み合わせることで適正に誘導員を配置しました。この取り組みは、高齢者の見守りや物流にも生かせるのではないかと期待しています。

他方、コンパクトシティ同士が連携して広域防災に活用している事例もあります。高松市をはじめとした讃岐地方は歴史的に降水量の少ないエリアで、溜池に代表される貯水施設を代々設けてきているのですが、昨今の気候変動によるゲリラ豪雨等によりそれらが逆に氾濫するという水害が多発するようになりました。そこで、高松市と近隣の綾川町、観音寺市との3市町連携で、道路交通事情や気象情報、河川水位、潮位などの情報を一元化し、俯瞰的な状況判断により防災・減災につなげています。

浜田:地域特有の課題をデータ利活用で解決していく代表的な事例ですね。南雲さんはどのような感想をもたれましたか。



一般社団法人スマートシティ・インスティテュート理事、三菱UFJリサーチ&コンサルティング専務執行役員 南雲岳彦

南雲岳彦(以下、南雲):日本にもいい事例が揃いつつある、自信をもっていいという感覚になりましたね。初期のスマートシティは個別分野でシステムが構築されていたのに対し、FIWAREをはじめとするオープンプラットフォームが生まれたことで、分野横断でのデータ利活用が可能になり、まちづくりを包括的に行えるようになった。そのエビデンスが揃ってきているという意味で、NECさんの技術力と貢献度は非常に高いと感じます。

一方で、今後日本で加速するであろうスーパーシティという大きな枠組みにおいては、デジタルテクノロジーにフォーカスしすぎる傾向がいまなお残っているように思いますね。「地域に暮らす人が幸福を感じるスマートシティをつくる」というのが本来の目的ですから、ここはいったんズームアウトして、社会全体の仕組みの中でどんな幸せを追求できるかという点に立ち返ることが大切。そのほうが、実は近道ではないかと考えています。

海外に目を向け、環境や政治経済、幸福度などさまざまな指標を評価した結果を見ると、最も優秀なのが北欧、続いてオランダやスイス、カナダやニュージーランドが名を連ね、日本は教育や医療は高評価ですが、それ以外はあまりぱっとしません。これは、「魅力あるまち」をつくるときには、やはり全体を見て「幸せとは何か。何のためにデジタルを使うのか」という哲学に立ち帰れ、というメッセージではないかと思います。

浜田:なるほど。スマートシティというと、デジタルにすごく偏ったイメージをもっていたのですが、マインドセットから変えていく必要がありそうですね。スマートシティ・インスティテュートが目指すスーパーシティの姿はどういったものになるのですか。

南雲:都市デザインの究極的な目標は、そこで暮らす人々の幸せ実感(Well-Being)を向上させることだと言ってよいでしょう。その高みを目指して、さまざまな考察や施策を積み上げていくのですが、まず出発点となるのは、自助・共助・公助、それぞれの領域でどんなことができるのかを分類整理するところからだと思います。ここからWell-Beingに至るまでの道筋を「スマートシティの共創マップ」にまとめていますので参考にしてみてください。




日本のまちづくりに「数値化・可視化」を


浜田:スーパーシティ・スマートシティの取り組みで重要なのが、市民参加型のスタイルかと思います。市民の前向きな力を引き出すためには何が必要になるとお考えですか。


NECクロスインダストリー事業開発本部 本部長 小野田勇司

小野田:いちばん大きいのが、住民自身が主体者になるためのプロセスをつくるということだと思います。自治体や事業者が主体となって進めていくとやはりどこか第三者的に構えてしまうところがありますからね。あとは、デジタルの力で現状を数値化することも住民の主体性を支える因子のひとつではないかと感じています。まちの状態を可視化することで課題がより身近なものになり、取り組みの効果を実感できることで、喜びも感じられる。

南雲:まさに私も同じ考えで、まちのDXは使い方次第だと思いますね。EU諸国は、都市のクオリティ・オブ・ライフを数値化したレーダーチャートを公開することで、市民がデジタル化の効果を視認できるようになっていますが、日本においても同様の手法を取り入れた取り組みが行われています。具体的には、市民のWell-Being(幸福感)とLiveability(暮らしやすさ)を可視化するために、オープンデータに基づく客観的指標と、アンケートに基づく主観的指標を組み合わせた、約80個の指標値をもつレーダーチャートを作成。それを市民と共有することで、それぞれの都市の強みや弱みが可視化され、どこをどう改善すると、より「幸せなまち」がつくれるかを、市民ひとりひとりが考えられるようになるんですね。



例えば、日本を代表する観光都市である鎌倉市は、客観的指標では、公共施設やインフラが充実している一方で、地価が高く、福祉施設が少ない、通勤時間が長いなどの欠点もある。特徴的なのは主観的指標で、自然災害面では低評価ですが、歴史・伝統等の文化資源の豊富さや、街への愛着といったシビックプライドに関する指標値は非常に高い。このように、私たちはいくつかの自治体との協働を通じて、データに基づいて、まちの未来像を言語化し、施策につなげるという活動を進めています。

小野田:日本の場合、ある程度成熟社会のため「なんとなく」始めてしまう傾向があるので、数値化、チャート化して視点を明確化するというプロセスは非常に大事ですね。


ジャーナリスト/前Business Insider Japan統括編集長 浜田敬子

実証から実装へ。スマートシティの課題とは?


浜田:スーパーシティ、スマートシティを進めるうえでの難しさや課題などはありますか。

小野田:行政の場合は予算の執行というのは年度単位になっているため、計画から実行までのスパンが短く区切られてしまい、なかなか実装に進まないという壁があると感じています。また、データ活用を進めることはプライバシーの問題と表裏一体であり、法令やルールの整備も重要になっています。これについては、テクノロジーで回避できる倫理問題もあるはずですので、自らを律し、技術力のさらなる強化を図っていきたいと考えています。

浜田:実装後に、コストやリソースの問題をクリアして継続するという壁もあるのではないでしょうか。

小野田:はい、そのとおりです。実装の壁とともにそれを解決するには、やはり先ほど南雲さんがおっしゃったように、効果をきちんと数値化して、あらかじめ計画段階から短期的、長期的という指標をみんなで共有しながら納得感をもって進めていくことが極めて重要になりますね。それができると成功事例になるのではないでしょうか。

南雲:そのためには、住民の方でも努力は必要です。日本人は「幸せ」というのを言語化するのがあまり得意な民族ではないのですが、それではサイクルが回りません。自分たちにとって「Well-Beingとは何か」というのをきちんと言語化することが最初のハードルになると思います。また、産官学民と多種多様なプレーヤーが協働するうえで必要になるのが、住民主体を重んじながら全体をコーディネートしていく、アーキテクトの存在。日本でそのメカニズムが育つにはもう少し時間がかかりそうです。

小野田:NEC自身もコーディネートを担うことがありますので、その苦労はよく分かります。まちごとにステークホルダーの構成やパワーバランスが異なるので、そこにどうアダプトしていくかというのは非常に大きなトライアルであることも明白です。しかしながら、日本のインフラを担ってきた企業として、世界に誇れる「地域らしい」まちを創出することはこれからの我々の使命だと強く感じています。大切なのはやはり、地域の方々と同じ目線で、同じ課題を解決するという姿勢で参画し、お互いに信頼感を醸成すること。そのうえで、課題解決のツールを提供するというスタンスを大事にしています。

地域の文化・歴史、人間味をまちの個性に


浜田:日本のスーパーシティ構想がまさに実装へと向かういま、さまざまな課題と解決法が抽出されたように思います。最後に、日本らしさとか地域らしさを追求していくためには何が重要なのか。お二人のお考えを聞かせてください。

南雲:まちづくりを考える際、自分の住んでいる国やまちの文化、歴史というのは意外と忘れている人が多いんですね。いまデジタルの時代を迎えて、何に依って立ったらいいのかというと、やはりその土地の記憶ではないかと思います。風土や気候によって異なる文化、歴史を「幸せの因子」に加え、独自の価値や強みを再現する。コロナによってまちと暮らす時間が増えたいまは、自分の生活環境を考えるいいタイミングなのではないでしょうか。

小野田:歴史的観点からみると、日本の国民性の一要素は「共助」ではないかと思います。行政と住民もそうですし、住民同士、住民と企業、住民とアカデミアもそうです。要は、そういう共助の枠組みをいかに日本らしく丁寧につくっていくか。そうすることでよりきめ細やかな魅力あるまちが生まれるのではないかと思います。そういう意味ではデジタルも、人と人ができるだけ人間味をもって触れ合うためのバックヤードの業務を効率化するための手段ですから、共助の世界観を思い描いてつくるべきものなんですよね。

南雲さんの話をお聞きして、あらためて「幸せとは何か」を可視化することの大切さを実感しました。また、現在を立脚点に未来と過去に大きく視野を広げ、あらゆる可能性の中から取捨選択していくアプローチにはまちづくりの醍醐味もあります。今日の話を実践に取り入れ、NECはこれからもスーパーシティのプラットフォームと独自技術の進化を図りながら、持続可能なまちづくりを拡大していきます。



浜田:バックグラウンドの異なるお二人の世界観が重なり合い、補い合う、有意義な時間だったと思います。お二人とも本日はありがとうございました。



「幸せとは、案外身近にあるもの」。長い自粛生活を通して身近なまちと多くの時間を過ごし、それまで気づかなかった地域の魅力を見つけた人も多いのではないだろうか。当然ながら家は街路空間につながっている。隣接する建物や緑地、商業施設……それらが互いに響き合いながらまちの風景をつくる。私たち一人ひとりもまちの構成員だと気づかされる。

そんななか、内閣府は「スーパーシティ型国家戦略特区域」の公募に対して全国31の自治体から応募があったと発表。31のポイントが表示された日本地図からは、都市OSによるデータ利活用によって課題を解決し、さらには新しい産業の創出を期待する31のまちの強い意思が伝わってくる。「幸せとは何か」南雲の問いかけが届くよう願う。

「デジタルは、人同士が人間味をもって触れ合う環境をつくるために使うべきである」と小野田は語った。その言葉に、最新の技術で日本のまちのDXを牽引するNECのスローガン、「Orchestrating a brighter world」という言葉がぴたりと重なるのだった。



なぐも・たけひこ◎一般社団法人スマートシティ・インスティテュート理事、三菱UFJリサーチ&コンサルティング専務執行役員。国内外のスマートシティおよびデジタル・ガバメントに関するリサーチ・政策提言・戦略アライアンス構築に従事。Well-Being(幸福感)やLiveability(暮らしやすさ)、地球との共生といったコンセプトを重視した新たなスマートシティのアーキテクチャ・デザインに注力している。

おのだ・ゆうじ◎NECクロスインダストリー事業開発本部本部長、PSコミュニケーション企画株式会社 取締役、EverySense,Inc.社外取締役。総務省「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」幹事会構成員や東北大学電気通信研究機構 運営委員会構成員も務める。電波政策・電子政府・地域振興プロジェクト等に長く携わり、現在は官民連携や異業種連携による新事業開発を牽引。Society 5.0を実現するためのスーパーシティ/スマートシティを推進している。

はまだ・けいこ◎ジャーナリスト/前Business Insider Japan統括編集長。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」やTBS「あさチャン!」などでコメンテーターを務めるほか、「働き方」などのテーマでの講演も多数こなす。


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Promoted by NEC / text by sei igarashi / photographs by Tetsuyuki shibuya / edit by akio takashiro

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