コロナ「デルタ株」感染者が増加するEU、渡航規制を緩和

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欧州連合(EU)は加盟国を訪れる米国の居住者に対し、新型コロナウイルスのワクチンの接種状況にかかわらず、入国を認めることとした。米国のほか北マケドニア、アルバニア、セルビア、レバノン、台湾の居住者も、接種の有無にかかわらず、隔離措置なしでEU域内に入り、移動することが可能になる。

EUが居住者の渡航をこうした形で認める国・地域を定めたこの「ホワイトリスト」にはこれまで、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエルなどが入っていた。

ただ、EU加盟各国には外国の居住者に対する渡航規制について、独自に決定することが認められている。そのため、観光に依存するキプロスやギリシャ、そしてスペインやフランスといった一部の加盟国は、ワクチンの接種完了を条件として、すでに米国の居住者の入国を認めていた。

域内各国は「デルタ株」を警戒


英国の居住者は、EUのこの「ホワイトリスト」から除外されている。同国の新型コロナウイルスの新規感染者に占める「デルタ株(インドで最初に確認された変異株)」への感染の割合が、非常に高い(90%を超えている)ことがその理由だ。

英国政府は自国で最初に確認された変異株の「アルファ株」よりも感染力が強いデルタ株の拡大の勢いを抑制するため、予定していたイングランドでの行動規制の緩和を7月中旬に延期。専門家らは、デルタ株はアルファ株に比べて感染者の入院率も高いことから、近いうちに医療体制がひっ迫する事態となる可能性もあると懸念している。

一方、欧州では英国以外でも、デルタ株の感染者が増加している。世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は、デルタ株はワクチンの有効率も低くなるとみられているおり(1回の接種では30%程度にまで低下するとされる)、「欧州全域で優勢な株になる」と警告している。

ポルトガルの首都リスボンでは新規感染者の半数以上がデルタ株に感染しているとみられ、6月18日から週末にかけて、ロックダウン(都市封鎖)が実施されたところだ。
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編集=上田裕資

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