これらの中身を、どんな組み合わせ、どんな順番で食べて行けば人は最高に「おいしい」と感じるのだろうか? その科学的最適解を、慶應義塾大学特任講師の鈴木隆一氏が検証した。
AISSY代表取締役社長も務める鈴木氏はAIを使った検査機器「味覚センサーレオ」を慶應大学と共同開発、これまでに「アサヒビール」「カゴメ」他大手食品企業の味覚の受託分析や食べ物の相性研究などを実施してきた。メディア出演も「あさイチ」「世界一受けたい授業」など多数ある。
以下、「最適な食べ方」を研究し、多くの同人誌も発刊する「食べ方学会」編集部(代表:市島晃生氏)が刊行した『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編4巻 〜AIに聞いたシウマイ弁当の食べ方』(「食べ方学会」編)からの引用(一部編集)で掲載する。
ちなみに番外、「人間代表」として駅弁マニア、俳優髙嶋政宏氏の回答も紹介する。AIのはじき出した「最適解」との違いは何だったか。
食品の相性を定量的に判定
「食べ方学会」編集部:(以下、──)まず、AISSYで取り組んでいる味覚分析について教えてください。
AISSYでは、食品の味覚分析および分析データを用いたコンサルティング、味覚に関する共同研究を行っております。私たちが使うのは、慶應義塾大学で開発された「味覚センサーレオ」です。これは、味覚を定量的な数値データとして出力できる機械です。
──味覚センサーレオでどのような分析を行っているのですか。
味覚センサーレオは、2つの食品の相性が良いか悪いかを数値化できます。まず、対象となる食品それぞれの5味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)を分析します。その後、AIを活用して、2つの食品の相性を判断します。
──AIを活用しているんですね。
はい。味覚センサーレオには、たとえば、「ビールには何が合うのか」「どの食品がビールと相性がいいのか、悪いのか」などを大量に学習させています。これまで学習した約3000のデータベースに基づき、「相性が比較的よい、悪い」という判定を行います。その結果は100点満点でスコア化されます。
「ミシュラン星つき店の肉とソース」を上回った、「たけのこの里」のチョコとクッキーの相性
──過去にはどんな組み合わせがありましたか。
これまでに測定した中では、目玉焼きと醤油が98点の組み合わせでした。なお、目玉焼きとケチャップだと92点でした。
レオには日本人の味覚で学習させていますが、予想外の結果が出ることも。たとえば、定番とも言えるビールと枝豆は、そんなに相性がよくなくて93点くらいでした。でも、唐揚げとビールは相性がよくて、97〜98点くらい出るんです。
──では、99点以上の例ではどんなものがありますか。
99点以上は滅多に出ません。過去に出た高得点の組み合わせでは、ミシュラン星つきのお店の肉とソースの組み合わせが99.5点でした。
でも99点以上は必ずしも高級料理というわけではありません。過去最高のスコアは、「たけのこの里」のチョコとスナックの相性で99.7点です。これはフレンチの三つ星でもなかなか出すのが難しいスコア。「たけのこの里」はアートの領域ですね。ちなみに、きのこの山は93.1点でした。
──なるほど。では、今回のシウマイ弁当なのですが......
今までお話した大前提を理解してもらったうえで、崎陽軒シウマイ弁当の中のおかずやご飯の食べ合わせ数値を発表するのですが、ちょっと驚くべき結果が出ました。99点越えの食べ合わせがいくつも見つかったのです。シウマイ弁当が長く愛されている理由が、今回の分析でわかりました。
崎陽軒シウマイ弁当。俵型ご飯8個に、おかずは、シウマイ5個、鶏の唐揚げ、鮪の漬け焼、筍煮、玉子焼き、切り昆布、千切り生姜、あんず、蒲鉾、小梅。