冬より夏ににニオイが気になる原因は、皮脂の分泌が増えて皮脂由来のニオイが増し、さらに衣類由来のニオイも目立つようになるからだという。
衣類由来のニオイが起こる原因は、特に湿度が高い時期に、洗濯乾燥直後からニオイをもっている服を着てしまっていることにある。または、雨で濡れたり汗をかくことによって着ながら生乾きになることで「戻り生乾き臭」もある。エクリン腺から出る汗は体温調節機能があるため、暑くなると水分が多い汗をかき、その汗が「戻り生乾き臭」を発生させる要因になるのだ。
では、こうした夏特有のニオイを防ぐにはどのようなケアを行うとよいのか。
石田は、皮脂由来と衣類由来、どちらもニオイに変わる前に対処することが重要だという。
「皮脂はもともと分泌直後にはニオイがないので、ニオイに変わる前に拭き取るのが効果的です。ボディーシートには除脂や殺菌効果があるものもあるので、それらを用いることでニオイの原因となる菌と皮脂の両方を弱めることができます。
生乾き臭が発生するのも、衣類に残った皮脂汚れと菌が接触することでニオイが出るためです。なので服に汚れをためないように着用後は洗濯を溜めずにこまめに洗ったり、除菌効果のある洗剤を用いて菌を衣服で繁殖させないことが大切です。経済的負担にはなりますが、肌に接着するインナーなどはシーズンごとに買い換えるのも効果的だと思います」
さらに、多くの人がやりがちだが、間違ったニオイケアについて聞くと、石田には2つの疑問があるという。
「まず、ニオイが発生した後にデオドラント製品を使うことに効果があるのか。そうした製品はニオイの元となる汗を制汗作用で出にくくするとともに、制菌作用で菌の活動を弱めることで、ニオイが発生する機会を減らすアプローチなので、ニオイに変わってしまった後にはあまり意味がないかな、と。デオドラント製品を使うのであれば、体が清潔な状態の時や、ボディーシートでリセットした後に使うなど、ニオイ発生の成分を少なくして使うと良いと思います。
また、自分のニオイがどのくらい周囲に伝わっているかは可視化できないので、実際製品がどのくらいの効果を発揮しているかは確実にはわからないのではとも感じます。なのでなにもしないよりマシだろうと、お守りのように使っている方も多いのではないでしょうか」
最後に石田は、ニオイが問題視される風潮に対してこんな思いを語った。
「人はみな汗も皮脂も分泌し、常在菌ももっているため、強度の違いはあれど誰しもニオイはあるものです。それを悪者とするのは、世の中として生きづらすぎると感じます。社会の風潮として、自分のニオイにも他人のニオイにも少し寛容になることができたら、ニオイで悩む人が減るのではないかなと思います」
ニオイは誰もが生きる上で必要な機能としてもつもので、過度に消そうとすると、かえって弊害が起こる。適切なケアを行うことで、さらにニオイと上手くと付き合えるようになるのではないだろうか。
第4回では、ニオイを用いた最新テクノロジーを紹介する。
石田翔太◎学生時代に自身が体臭で悩んだ経験から、2016年10月にオドレートを設立。ニオイに関する唯一の国家資格である臭気判定士を取得、また外部研究機関との共同研究を経て体臭評価技術を確立し、これまでに1000人以上の体臭を評価。体臭に関する悩み相談も多数実施。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。専攻は統計学。
【連載】ニオイは悪者か?<全4回>
1.「ニオイ」は悪者か? 体臭について知っておきたいこと
2.嗅覚と恋愛 「あの人のニオイが好き」の科学的根拠
3.そのケアは正しいか? 臭気判定士に聞く、夏場の「ニオイ」対処法